2016年6月7日火曜日

[Music Week] ベビーの歩み:BABYMETALの驚くべき成功の背後にいるチームをご紹介

ベビーの歩み:BABYMETALの驚くべき成功の背後にいるチームをご紹介

マレー・スタッセン(2016年6月6日




あるバンドを音楽的に驚嘆すべきものとして述べることに絶対的な正統性があることはまれだ。でもBABYMETALは、疑いもなく、真のジャンル横断的な音楽に関する事件である。

Jポップ、カワイイ、そしてスラッシュ・メタルをブレンドするこの日本のグループは、3人の十代の少女たち、中元すず香(スゥメタル)、水野由結(ユイメタル)、そして菊地最愛(モアメタル)で構成され、作品が多く、信じられないギタリスト、大村孝佳 をフィーチャーした神バンドがバックを務めている。

「メタルとブレンドしたJポップ」という言葉を紙で読むと、うまく行かないように響くし、理論上はそうなるはずだ。Jポップは楽しく、キャッチーで、カワイく、奇抜だ。メタルは、それがブラックであれ、スラッシュであれ、デスであれ、通常はとてもシリアスだ。でもBABYMETALはこれが可能であることを証明し、確かにうまく行っているし、BABYMETAL現象に対する抵抗は無意味だ。

「これはジャンル分けに反抗しています」と、バンドのレーベルであり、制作会社のアミューズとBABYMETALの日本のレーベル、トイズ・ファクトリーと欧州のライセンス契約を結んでいる英国イアーミュージックの音楽ディレクター、ジョナサン・グリーンはいう。バンドは、グローバルにイアーミュージックを経営しているマックス・バッカロが契約した。

「BABYMETALは独自のジャンルの中に存在していて、そこには彼らしかいませんでした」と、グリーンは付け加える。「私たちがとてもラッキーだったのは、とてもオープンマインドな人々がいて、インターネットによって英国の大衆が、通常のメディアのゲートキーパーなしに直接BABYMETALとつながり、自分たちがこのバンドが本当に大好きであることに気付いたのです」

3年ほどの間に、このグループは、少なくとも3つの英国の記録を破った。オフィシャル・チャーツ・カンパニーの歴史で、最高位のチャートを達成した。また、ウェンブリー・アリーナのヘッドライナーを務めた初めての日本のバンドとなり、その晩この会場のマーチャンダイズの販売記録を塗り替えて、マーチャンダイズ売り場のすべてを売り尽くした。

バンドの英国におけるライブの爆発についての触媒になったのが、2014年2月に日本でリリースされた、バンド名を冠したアルバムからのシングル、"ギミチョコ!!"だ。この曲のビデオはバイラル化し、数ヶ月の内には、初の英国公演がブッキングされた。

キリマンジャロのプロモーター、アラン・デイは、「私が欧州ではじめてBABYMETALをブッキングしました」と、説明する。「2014年の2月か3月にソニスフィア・フェスティバルをブッキングしました。これは"ギミチョコ!!"がバイラルになった年です。私はオンラインでこれを見て、たくさんの人たちがこれについて笑って、「何じゃこりゃ?」といっていました。そして私は、「うわ、こんなの見たことない」と思ったのです。

「メタルは通常、ギターを演奏している4、5人の男たちですが、これは違っていました。これは素晴らしい。私はググってみて、もっと良い別の曲を見つけました。これが"メギツネ"でした。さらに曲を見つけ、「分かった、これはすごい、これがフェスティバルに必要だ」と考えたのです」

「友人の一人がロス・ウォーノックで、ユナイテッド・タレント・エージェンシーのエージェントでした。私たちは話をして、BABYMETALをソニスフィアに出したいと話したのです。私は(ウォーノック)と契約して、BABYMETALがやってきて演奏するようにしました」と、デイは付け加えている。

「BABYMETALのユニークなメタルに対する見方は、このジャンルに新しい命を吹き込みました」と、ウォーノックは言う。「英国中でこのバンドに対する本当の需要がありました。ショーは、ものすごく、このことが広がっていったのです」

デイはミュージック・ウィークに対して、バンドをブッキングしたときの反応は、「嘘だろ?」から「これは絶対すごいことになる」までばらばらだったという。「BABYMETALはもともとソニスフィアのテントで演奏するということでブッキングされていましたが、反応があまりに大きかったので、メイン・ステージに移りました。あの午後1時に、私たちはいままで一番大きな観客の反応の一つを見ることになりました」

「BABYMETALがとても人気がある理由は、ロックとメタルはいつも何か違ったものを求めているからだと思います」と、デイは付け加えている。「SLIPKNOTが爆発したときは、仮面とイメージでした。明らかにそれに合った素晴らしい曲がありましたが、それはすごい話であって、同じことがRAMMSTEINにもいえます。つまりすごい話であり、それはこれまで成功したメタル・バンドを生み出したとは言えない国から来たものだったのです」

2014年夏のソニスフィアの演奏に続いて、BABYMETALのケンティッシュ・タウンのザ・フォーラムにおける演奏がブッキングされた。このショーは1週間かからずにソールドアウトになった。「私たちはすげえ、何かが本当に起こってるぞ、という感じでした」とデイはいう。「ザ・フォーラムでのショーから、日本人やロンドンの連中だけがショーにきているだけではなく、完全に混ざり合ったロック・オーディエンスだということが分かるようになりました」

「旅をしてくる人もおり、中には英国のはずれからはるばるやってくる者も、欧州から来る者もいました。標準的なロック・ショーだったのです。SYSTEM OF A DOWNやSLIPKNOT、あるいはマリリン・マンソンを見に来る人たちが、BABYMETALを見に来たのです」

次の、より大規模なブリクストン・アカデミーのショーが2014年11月に予定されたが、こちらもソールドアウトになり、さらにBABYMETALは今年早くにSSEアリーナ・ウェンブリーで、日本のバンドとして初めてのヘッドライナーになった。そして、前にも述べたように、その晩は、一日で販売されたマーチャンダイズに関する会場の記録を破った。

「BABYMETALは幅広く、異なったファンベースを持っており、それがこのムーブメントの一部であると感じたがっています。BABYMETALのファンはとても忠実で、BABYMETALが行う壮大なショーを評価しています」と、バンドのマーチャンダイズ会社であるマーチャンダイジング・フォー・ライフ社の販売ディレクター、ゲイリー・ペテットはいう。「バンドのユニークなビジュアル面での美学につながっているアートワークやイメージによって、ファンが買いたくなり、大切にしたくなるような幅広い製品をファンに届けることが簡単になるのです」とペテットは付け加えている。

"ギミチョコ!!"は、2015年5月に、イアーミュージック経由のデビュー・アルバムのリリースに先立ってデジタルでリリースされた。この日本では第2位にランクされたアルバムは、英国のアルバム・チャートでは103位までしか上がらなかったが、そのライブ・ショー、ラジオ・プレイ、そしてロック・プレスからの肯定的な関心によって、バンドは英国でのファンを数多く獲得し始めた。「BABYMETAL」は以来、これまでに14,208枚売れている。

「バンドが既にソニスフィアで、事件といえるパフォーマンスを行っていたことはラッキーでした。おかげで、信じられないような関心が生まれたのです」と、イアーミュージックのグリーンはいう。「BABYMETALはまた、既にザ・フォーラムとブリクストン・アカデミーでもショーを行っており、私たちは基本的にデビュー・アルバムのリリースの計画を立て、PRチームと協力して、基本的に学校が休みの時に活動するアーティストに対する大きなインパクトを創り上げたのです」

「BABYMETALは、ロック・メディアの前向きな考えを持つ人たちが、何か新しいものを求めているという適切なタイミングで登場したので、私たちは先を見越して行動するエージェントとプロモーター、それにとても良いPRを得ることができ、これはありふれたメタル・バンドではなく、だからこそ私たちが大好きなんだと言うことが分かるロック・メディアの人たちとつながっていきました」

現在はバンドのPRを担当し、ソニスフィアのプレスでもあるノイズ・カルテルのアダム・サジールは、ミュージック・ウィークに対して、BABYMETALは2014年に最初のショーのために英国に来たときに、インタビューを行うことを予定していなかったという。「フェスティバルでほとんどすべてのメディアが時間をくれと求めていたのに、PRを考えていなかったのです」

「BABYMETALに、メタル・ハマー誌とのインタビューだけでいいから考えてくれないかと頼みました。少なくとも私の見方では、究極的にコアとなるファンベースは、最初はメタルヘッドとなるので、メタルのプレスで信頼を得ることが大切だと考えていると説明したのです」

「BABYMETALはそうしてくれ、メタル・ハマーから早い時期の支援が得られたことが、利息をうみ、より幅広い音楽シーンやメディアが、BABYMETALをずっとシリアスに受け止めるようになりました。リーダー的なメタル誌が評価するのであれば、その正統性に疑いがないということになります」

「わずか2年で、このことがどこまできたのかを見ると本当に満足を覚えます。特に、どれだけの数の懐疑的な連中が、これは一発屋だとして、真面目に受け止めようとしなかったのかということを考えると。こういった連中の多くは、特に強烈な「Metal Resistance」のあとで、転向しました。このアルバムは私の控えめな意見では、ポップ・メタルの傑作です」

「Metal Resistance」は、4月1日に英国でイアーミュージックからリリースされ、10,470枚(6,630枚の物理的コピー)を売り、オフィシャル・チャート・カンパニー史上、日本のバンドとして最高位に入ったアルバムとして、15位にチャートインした。6月10日(金)に、BABYMETALはダウンロード・フェスティバルのメイン・ステージで演奏する。

「リーズ、レディング、そしてダウンロードで昨年演奏しました。でもダウンロードは、アナウンスなしでのDRAGONFORCEのゲストとしての登場でした。テントは10,000人で埋まり、(観客は)熱狂しました」と、グリーンはいう。

「もし誰かが、私たちがBABYMETALとサインした時に、これは史上最高の日本のバンドになると告げていたら、あまりに突飛な想像だったでしょう」、とグリーンは付け加えた。

「ここ1年半の間、BABYMETALはとにかく成長を続け、まだずっと成長する可能性があると考えています。バンドが活動できる時間が限られているので、もっとショーを演奏するために戻ってこられるようになれば、ファンベースはとにかく成長し続けるでしょう」

▼元記事
Baby Steps: Meet the team behind Babymetal's phenomenal UK success


22 件のコメント:

  1. さすがMUSIC WEEKだねえ。いい記事だ。

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  2. 裏方の支えの大切さが分かる記事ですね。
    YOUTUBEでギミチョコをみて直ぐに行動を起こし、ソニスに呼ぶ。
    ソニスでは反応が大きければサブステージからメインへ変更する。
    勇気がいるが、最良の判断だった。

    サマソニのスタッフに読んでもらいたいわ。

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  3. 懐疑的な懸念を打ち消したBMも実力も前提にあるが、総じて・・・英国の業界が好意的に受け入れてくれた事が伺えますね。
    特に、ソニスをブッキングしてくださった、『アラン・デイ』という方は、業界の白T(世界展開初期から支えてくれたという意味で)として覚えておきます。
    欧米ミュージックカルチャーの懐の深さを感じました。

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  4. こう言う分析や視点を、どうして日本の雑誌や専門家は持てないんだろう。
    アルバムのレビューの時もそう思った。
    スポーツの記事なんかでも、戦術分析とか組織作りへの専門的な視点より手っ取り早くスターを作ってワイドショー的に盛り上がることばかりだし、中継に芸人出して茶化し出すケースもそうだけど、きちんとした専門的知識をもとに、納得できる分析をきちんと記事にする人が少ない

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  5. EMにとってソニスフィアは博打的だった。
    それは成功した。
    企画者としての選眼能力がある人と出会えた幸運を
    チームが持っていた。

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  6. 興味深い記事の翻訳ありがとうございました!
    チームBMだけの力でなく、適切なときに最善の仕事をしてくれる環境があったことや、それが続いて行くまさにサクセスストーリー<序章>を読ませてもらいました。

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  7. 素晴らしい記事だ。
    そしてソニス初年の数々の謎がここで解けた。
    メタルハマーの支援、プレスの狂乱、ファンベースの多様さの分析など数えきれない。
    確かに地球の反対側のバンドなので年間向こうで活動できる時間は限られるが、海外ツアーに多くの時間を費やすBABYMETALは確かに英国の音楽関係者の熱意に打たれて予定を組んでいることが裏付けられた。
    しかしフォーラムの時?PRすることを全く考えていなかったのには失笑、いやコバの気持ちを考えると微笑ましい感じすらある。
    その謙虚な気持ちを失わなければ、支えてくれる人はどんどん現れると思いますよ。
    日本と違って、ね(笑)

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  8. やっぱり関係者に直接取材してる記事は事実関係が良くわかっていいですね。

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  9. UKデビューの舞台裏が分かって良かった。当時中高生だった3人には頭が下がる。スポーツ界では世界で14,5才の女子選手の活躍は珍しくないが音楽の世界では日本人初のこと。ルックス、才能とステージ度胸を併せ持ったタレントは3人同時なんてもう出てこないだろう。

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  10. いろんな人がサポートしてくれたんだね

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  11. 感動的な記事でした。
    B誌のライターに読ませたい。
    彼らは今年の4大フェスの記事を書くときも、意図的に無視するんだろうか。
    それはそれで面白いけどね。

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  12. 数年後にイギリスのプロダクション制作の音楽ドキュメンタリーで、ベビーメタル ブレイクスルーストーリー!期待します(^^)

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  13. 久々に歴史が分かる記事で面白かったです。管理人さん、ありがとう。

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  14. 結構重要な内容で驚いた

    メタルハマーに関してはKOBAとアミューズが接触する判断をした、という意見があったけど実際は現地プロモーション担当の判断だったんだな

    そしてBABYMETAL側はインタビューを受ける予定はなかったと
    やっぱあの瞬間まではイギリスでの人気を把握してなかったのは本当だったんだな

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  15. ちゃんと取材するって、大事ですね。
    ただの感想文とは重みが違うわ!

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  16. ソニスの主催者も、メイン格上げして成功したのを「100%私の決定だ」と鼻高々だったもんなw
    あれだけの大博打に勝ったら、そりゃ気持ち良いもんだろうw

    ただ、周りが大博打と思ってるだけで、主催者らにしてみれば十分勝算があってのことだったのかもしれないけど。

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  17. 良い記事、良い翻訳ありがとうございます。
    ソニスはベビメタ側が売り込んだとか言ってたヤツいたが、違うみたいね。
    むしろ及び腰なのを「大丈夫だから」といろんな人に引っぱってもらってる感じ。

    ・・キツネ様のお導きとしか思えない。

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  18. こんな面白い記事を、無料で読めるなんて・・・・
    ありがとうございます。

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  19. >>それはこれまで成功したメタル・バンドを生み出したとは言えない国から来たものだったのです

    今まで海外で頑張った日本のロック関係者が泣くわw

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  20. 何気に、英国人って、結構先進的な着眼点を持つ人間が多いように思う。ある種、天才的というような。
    時にはそれが、英国面というか、どうしてこうなった的な結果に終わることも多いけどw

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  21. バンドの力もないと無理だったけど、三人の
    頑張りとタレント性と、何より時代のタイミング、運も全て揃った必然だったのか....も

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  22. 元記事のURLが変わっていました
    http://www.musicweek.com/analysis/read/baby-steps-meet-the-team-behind-babymetal-s-phenomenal-uk-success/064975

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