2016年3月11日金曜日

JaME World 「Metal Resistance」レビュー(訳)

BABYMETAL - METAL RESISTANCE

リコ

その名はその計画を表す




「Metal Resistance」で、評判のJポップ・グループ、BABYMETALは、その2014年のデビュー作、「Babymetal」の成功を再現しようとする。既にバンドを大成功に導いた、Jポップをヘヴィーメタルと組み合わせるという全体の構造は変わらない。前作同様、「Metal Resistance」は、他の日本のアーティストとは一線を画す、さまざまなジャンルからの影響が詰まっている。「Metal Resistance」は、その好評な前作の足跡をたどることができるだろうか?

「Metal Resistance」は、既に良く知られている"Road of Resistance"で幕を開ける。このストレートなパワー・メタル・ナンバーは、以前のBABYETALのマテリアルからの歓迎すべき変化である。文字通り、DRAGONFORCEのギタリスト、サム・トットマンとハーマン・リーの取り組みを聞くことが出来る。Su-Metal、Moametal、そしてYuimetalも、その演奏に多くのエネルギーを注ぎ込んでおり、その中間の「ウォーウォーオオー」というチャントは、その野生の魂を保ち続ける助けとなる。だが、若々しいエネルギーで充ち満ちているとしても、"Road of Resistance"で、アルバムは、素晴らしいオープニング・ナンバーを持つチャンスを逃している。この曲が1年前に出されたという事実によって、多くのファンは、BABYMETALのまったく新しいマテリアルへとスキップしたいという誘惑に逆らうことが難しく感じられるだろう。

"Karate"は、より良いオープニング・トラックになったはずだ。というのは、このアルバムの残りに何を期待すべきかを非常に正確に描き出しているからだ。イントロはゆっくりとフェードインして緊張感を高め、グルーヴィーなギター・リフの嵐で爆発する。素晴らしいジェントのパッセージが、この曲にさらにモダンな感覚を与える。Su-Metalのヴォーカルは、力強く、成熟したヴァイブを曲を通じて放っている。歌詞は、"Rond of Nightmare"にかなり近いが、コーラスは、ラップ曲の流れを持つ、Su-Metalのフラットな歌声によって、何か新しいもののように響く。

"Awadama Fever"は、ちょうどうまい具合に始まるが、あとで平凡になってしまう。その強力なドラムンベースのビートは、"Catch Me If You Can"に似ているが、キャッチーなリフレインは、"Gimme Chocolate!!"に似たヴァイブを持つ。エレクトリックなブレイクダウンは、曲にアクセントを与えているが、少し不完全だという印象を免れない。たぶん、ライターたちは、できる限りいろいろ詰め込んで、どうなるのか試してみるのではなく、中心となる要素をもっと減らすことに力を注ぐべきだったんだろう。この曲では質よりも量がひどく混ざり合っている。

BABYMETALは、オルタナ音楽の要素はそれほど試してこなかったので、”YAVA!"はユニークなセンスの良さが感じられる。残念ながら、これは「Metal Resistance」で最も記憶に残らない曲でもある。YuimetalとMoametalの声は実質的にちゃんと聞こえず、どの楽器もたいした印象を与えない。三姫の可愛らしいバック・コーラスも助けにはならない。"YAVA!"と”Awadama Fever"のどちらも、ファースト・アルバムのスタイルで新曲を作ろうとしたのだと思えるが、ファーストはその幅広い影響と予測の出来ない曲構造によって成功に到ったものだ。この2曲は完全な失敗作ではないが、その可能性の多くは無駄となっている。

Su-Metalのソロ曲である"Amore"は、その新旧の要素の素晴らしい組み合わせによって、アルバムを正しい軌道へと戻す。この曲は、バラード感覚を与えるSu-Metalの情感のこもったヴォーカルでゆっくりと始まるが、まもなく、高速ギター・リフが入ってきて、"Amore"は全力のパワー・メタルへと降りていく。これは以前のBABYMETALの曲に良く似ているが、バックグラウンドのコーラスや短いが記憶に残るベース・ソロといった細かな部分が、この曲に独自の魅力を与えている。


"Meta Taro"は、このアルバムのターニング・ポイントとなっている。「Metal Resistance」の前半が、ほどよく楽しくのんきなものとなっているのに対して、ここからぐっとヘヴィーさを増していく。この曲では、BABYMETALではじめてペイガン・メタルの要素が使用されており、まるでヴァイキングの行進のように響く。5曲のあわただしい曲のあとで、"Meta Taro"は、テンポを落とした、違ったアプローチを採るが、その代わりに男性のグロウルとダウンチューンしたギターで埋め合わせている。YuimetalとMoametalは、曲の軽い部分を歌い、Su-Metalは、よりヘヴィーでアトモスフェリックなパートを担当するので、軽いアルバム前半とよりブルータルでアトモスフェリックな後半の間を優雅に結びつけるものとなっている。

次の曲、"From Dusk Till Dawn"は、まさに最初から極限的な緊張感を築き上げ、全体の雰囲気は、Su-Metalの珍しいが巧妙に配されたチャントが入ってくるたびに、新しいクライマックスに達する。ただし、曲は全体的にはインストゥルメンタルなので、リスナーは、この曲が与える背筋がゾクゾクするような体験を楽しめるようになるには、完全に集中しなければならない。さもなければ、何もかも聞き逃してしまうことになるだろう。注意して聴けば、この曲はアルバム全体のハイライトであり、BABYMETALがただのメタルとアイドル音楽のフュージョン以上のものであることを証明していることが分かる。

次の2曲は、MoametalとYuimetalが、サブユニットのBLACK BABYMETALとして演奏している。"GJ!"のエキサイティングなイントロに続いて、BLACK BABYMETALのラップが、ファースト・アルバムの時と同じように登場するので、リスナーはBABYMETALのファースト・アルバムの時代へと戻ることになる。歌唱という意味では、コーラスはちょっとだけ抑えられているが、巧妙に配されたダブル・ベースのパッセージやパワー・コードによって、より暗く、アトモスフェリックな歌詞と素晴らしい対比を為している。ただクライマックスは少し残念で、コーラスの最後の繰り返しを含んでいるだけだ。


"Sis. Anger"では、リスナーに驚きが待ち受けている。たぶん、これまでにBABYMETALが制作した最もヘヴィーな曲かも知れないからだ。コミカルなイントロに続いて、「ブラストビート」とギター・リフが暴走して入ってきて、曲に対してちょうどYuimetalのお気に入りのバンドであるCANNIBAL CORPOSEに似たサウンドを与えている。巧妙な構造を持つコーラスは、ウォー・アンセムのように響き、ブリッジは、低音側の分厚いパワーを伴った、ノイズの壁そのものだ。この曲があることで、BABYMETALが、実際にメタル・バンドと呼ばれることにもはや何の疑いの余地もない。

BLACKBABYMETALの"Sis. Anger"と好対照をなすのが、次の曲、"No Rain, No Rainbow"で、これはBABYMETAL初の本物のバラードだ。Su-Metalのソロで、そのセンシティブで女性的な側面を示すチャンスが与えられており、これは疑いもなく、ファンが大歓迎するものだ。大部分がピアノによる伴奏で、気持ちよく、魅力的なギター・ソロで曲はクライマックスに達する。

"Tales of The Destinies"で、BABYMETALは、プログレッシヴ・メタルへとなだれ込む。混沌、混乱、そしてちょっとしたフュージョンを伴うイントロは、ノイズの嵐、慌ただしいペースの変化、そして複雑なギター・リフによるものだ。アンビエントな要素と狂乱的なサウンド構造は、DREAM THEATERのようなバンドに喩えられるだろう。Su-Metalのファンはわくわくするだろう。"Karate"以来、この曲は彼女の最高のコーラスをフィーチャーしているからだ。同様に、YuimetalとMoametalのファンも喜ぶ理由がある。二人は、ここでふさわしい歌唱の機会を得ているからだ。

"THE ONE (English Version)"は、十分にゆっくりとしたエピック・ギター・リフで始まり、最初から素晴らしい雰囲気を創り出す。ピアノの伴奏と共に、Su-Metalが少しひねりの効いた最初の歌詞を歌い出す。完全に英語だ。アクセントは所々少し強すぎるように響くが、全体としては非常にうまくやっている。コーラスと最後のアウトロも雰囲気があって、曲のクライマックスという感覚に貢献している。ファンはこの曲が大好きになるだろう。これは涙をそそるばかりでなく、これまでに1年半強に渡ってBABYMETALを中心に進んできた"The One"の物語の結論をもたらすからだ。だが、"The One"の意味を良く知らないニューカマーはこの曲で問題を抱えうる。スローなペース、そして少しだけピンとこない歌詞によって興味を失う者もいるかも知れないから。

成功を収めたデビュー・アルバムのフォロー・アップ作を作ることは、ミュージシャンが直面しなければならない最も難しい仕事の一つだ。「Metal Resistance」で、BABYMETALは、「Babymetal」で創り上げた遺産を引き継ぐことをやり遂げている。BABYMETALは必要な部分で、向上を遂げ、ずっと円熟したリスニング体験をもたらし、前作よりもずっと完成度が高いと感じさせるアルバムを創り上げた。

ただし「Metal Resistance」は独立した作品ではなく、「Babymetal」の続編と考えるべきだ。「Metal Resistance」で、BABYMETALはエレクトロニクスを後退させ、ずっとヘヴィーになったが、それでもBABYMETALはやはり人々が愛するか、嫌うかのどちらかとなるバンドの一つだ。だが「Metal Resistance」で、その音楽はメタルのジャンルによりしっかりと根を張りながら、なおメタルヘッドとアイドル・ファンを同じように喜ばせるだろう。



0 件のコメント:

コメントを投稿