2017年4月8日土曜日

[Metal Hammer] BABYMETAL軍:BABYMETALとMETALLICA(過去記事、完全版)

BABYMETAL軍:BABYMETALとMETALLICA

エレナー・グッドマン(メタル・ハマー2017年3月号)




[訳注:Metal Hammer本誌を入手しましたので、以前アップしました「[Metal Hammer] スゥメタルがメタル・ハマーにMETALLICAの前座体験を語る(前半・後半)」を改稿しました。一部表現を改め、またキャプション部分を追加しています]

遂に実現した。今世紀最大のメタルの風雲児が、史上最大のメタル・バンドと共演したのだ。ついてきてほしい。BABYMETALがソウルでMETALLICAとしのぎを削る。

1月11日水曜のことだった。世界はまだ新年の茫然自失から己を取り戻していなかったが、BABYMETALは2017年もうまくやり、その夢を叶えようとしていた。その晩、韓国ソウルで、彼女たちはMETALLICAの前座を務めていた。

女の子たちにとって、一連の注目度の高い公演の最新のものとなった。昨年12月、彼女たちは英国アリーナ・ツアーでRED HOT CHILI PEPPERSの前座を務めた。これはまもなく米国でも繰り返される。今月後半には、彼女たちは日本でGUNS N' ROSESをサポートした。だがMETALLICAとの共演は、一番大きなものだ。メタル・コミュニティーの完全な一部になるという意味だけでなく、スゥメタル、ユイメタル、モアメタルが、その創設者であり、船長でもあるコバメタルと共に、その究極の野望を達成したのだ。

「METALLICAさんは私たちにとって神様みたいなものです」といつも微笑み、挑戦に取り組む姿勢のスゥメタルは熱意を込めて語った。「私はずっとMETALLICAさんを尊敬してきましたし、共演することを夢見てきましたけど、こんなに早く実現するとは思ってもいませんでした!」

[キャプション:高尺スカイドームでジェイムズはソウルのファン達に向けて演奏した]

BABYMETALの出世、そしてそのヒーローたちの賞賛は、本当に早かった。出会いは、2013年8月の大阪のサマーソニック・フェスティバルだった。BABYMETALは「Justice For Babymetal」トリビュートTシャツを着ていて、これがまもなくバンドの関心を引き、ラーズは小さなフラワー・ステージで演奏するBABYMETALを観ることになった。後に、女の子たちはお返しに、このヘッドライナーが演奏をするのを見た。これはBABYMETALにとって初めてのメタル・ショーだった。

「私は本当にびっくりしました!」と、すべてを変えた日を思い返しながら、スゥメタルはこう声を上げた。「『何だこりゃ?』という感じでした。耳を通じてMETALLICAさんの音楽を聞くのではなく、すべてを心で感じるのが面白かったんです。それまでは、メタルはなじみのない怖いものだと思っていましたが、あのコンサートでメタルを楽しむようになり、もっとこのジャンルのことを知りたいと思いました」

[キャプション:BABYMETALは"Road of Resistance"でカワイイ・メタルの旗を掲げた]

[キャプション:ユイは韓国で初めてのショーの雰囲気を受け止めた]

[キャッチ:「METALLICAさんは、私たちにとって神様のような存在です」:そして私たちはスゥメタルはキツネしか崇拝していないと思っていた]

一方で、バンドのマネージャー、コバメタルは長年のファンだ。その年の後半に千葉の幕張メッセで行われたBABYMETALの「Legend 1997」コンサートでは、METALLICAの象徴的なレディー・ジャスティスのような、バンドの上にのしかかり、崩れる女性の巨大な像の制作を監督さえしている。BABYMETALがヘビー・ミュージックのファンとより簡単に結びつくことを可能にするようなレベルのファンだ。コバメタルは、「The Black Album」のリリース後の1991年に、5万人を収容する東京ドームでMETALLICAを見たことを覚えている。この経験は、スゥメタルがそうだったように、コバメタルに影響を与え、その人生を永遠に変え、最終的には現在彼が歩んでいる道へと導いた。「このアルバムは、メタル・シーンに新しい視野をもたらしたんです」とコバメタルは説明する。「METALLICAは大きな影響力を持ち、そのサウンドはあまりに自然だったので、私は彼らの音楽にすぐに取り憑かれました」

26年後の今日、二枚組の新譜、「Hardwired...To Self-Destruct」をサポートする、METALLICAのWorldWiredツアーのアジア・レグが始まった。街を二つに分ける漢江のもと、ソウル南西部にある高尺洞には、曲線を為す高尺スカイドームが巨大なクローム色の雲のようにそびえ立っている。この16,000人収容の会場は、建設されてまだ1年であり、プロ野球チーム、ネクセン・ヒーローズの本拠地となっている。外側には、METALLICAの存在を告げる大きなポスターがポールから下がっている。マーチャンダイズのテントでは、売り子がBABYMETALのTシャツの箱を次から次へと開けていた。4種類のデザインがあり、それぞれに感謝の聖なる祈り、すなわち「フォックス・ゴッドが私たちをメタル・マスターのもとに導いた」が背中に縫われている。

これはMETALLICAにとって、ソウルにおける5度目のショーだが、BABYMETALにとっては初めての公演となる。韓国にはKポップ・シーンがあるが、Sekai no OwariやRADIWIMPSのような日本のロック・バンドの方が良く知られている。観客の中には、手作りのメダルやピン・バッジを持ったダイハードなBABYMETALのファンもおり、その中には「Kawaired...To Wallet-Destruct」(カワイードから財布破壊へ)というモットーが可愛く飾られていたが、ほとんどの人間にとっては、ポップなフックとヘッドバンギングのカオスの組み合わせのようなものを聞くのははじめてのことだった。バックステージで、スゥ、モア、ユイ、それに神バンドはステージに上がる準備をしていた。赤と黒の衣装を調整し、髪の毛はあるべき場所にスプレーで固められ、ウォームアップが終わった。その間、人々は千人単位でスカイドームに入場し、明るい緑のフロアをさっさと横切って、BABYMETALの旗が飾られたステージに向かった。これは本当に巨大な空間だった。

[キャプション:カークはバックステージで、女の子たちに短いギター・レッスンを行った]

ショーの時間になると、BABYMETALとその一団はバックステージの廊下を抜け、METALLICAの目立つロゴが付けられたフライト・ケースの脇を歩いて通り過ぎた。バンドのおなじみの、語りによるイントロのテープが鳴り響き、恵み深い神、フォックス・ゴッドによってBABYMETALが創造されたことが語られ、それからステージへと上がり、気分が高まる強力な"Babymetal Death"が演奏され、続いて神バンドが前面に出て、そのものすごいメタル・ソロを聞かせる。今夜はホストに対する敬意を表し、"Master of Puppets"のクラシックなギター・デュエルのリフが響き渡り、観客が驚きの歓声を上げ、その注目を集めた。

次に女の子たちは完璧なフォーメーションで"Catch Me If You Can"を演奏した。「大きなサークルを見せて」とスゥメタルが叫び、ピットを作らせようと腕でサークルを描いて見せたが、オーディエンスの一部は誤解して、ジェスチャーをそのまま真似した。ダンスが強力な"メギツネ"はいつも通りエネルギッシュであり、"ギミチョコ!!"は暖かく受け入れられ、スゥがみんなに"Karate"の「ウォーオーオーオー」を歌わせた。クロージング・ナンバーの"Road of Resistance"が始まる頃には、ありえないほど激しいリフに合わせて体がぶつかり合うピットが正面にできていた。

中央日報の評論家、チュン・ジンホンは後に熱の籠もった言葉で最高のショーだったと述べている。「グループは、近年熱心なファン層を獲得しており、一つのビートをミスすることもなく、このバンドが愛されるに到ったダンスとメタルの印象的な演奏をやってのけた」と書いている。「私は日本のアイドルのトレンド全体について良く知らなかったので、最初は懐疑的だったが、信じられないほど新鮮で面白かった」と彼は後に述べている。METALLICAファンも、キツネを掲げた。

韓国に配置されているイリノイ出身の22歳の兵士、ショーン・ワインミラーはBABYMETALのデビュー・アルバムは持っていたが、今夜までライブを見たことがなかった。「正直なところ、彼女たちはMETALLICAよりもヘビーだと思う!」と彼はほめちぎった。「でもこれはチューニングによるものだとは思う。METALLICAは通常はEかEbしか演奏しないからね。今夜のショーを、BABYMETALが最初にワールドツアーを行ったときのYouTubeで見た以前のフッテージに比べると、女の子たちは今では海外で演奏することにずっと自信を持っていると言える」

バンコクから4人の騎手を見にきたバラソルン・キチャムノン(35歳)も、BABYMETALのライブを見たことはなかった。「俺が彼女たちのことを調べて、その音楽を聞いたときは、俺の好みじゃないと思ったんだ」と彼は告白する。「だがチャンスがあれば彼女たちを見たいとは思っていた。演奏がとても楽しそうだったからね。彼女たちのショーはとてもエネルギッシュで、これまで見たこともないものだった! "Karate"を演奏したときが最高だったね。あの曲が俺をファンに転向させる上で大きかったよ。ショーのあともずっと頭から離れなかったんだ」 

常にプロフェッショナルなスゥメタルは、このような大きなイベントでプレッシャーを感じたが、ステージを支配し、観客を味方に引き入れたことができてうれしかったと認めた。「私はまだぼーっとした気分でステージに上がりました」とスゥメタルは明かしている。「韓国での初めてのショーだったので、私たちとお客さんは、どういう風にショーを盛り上げればいいのか、ぎこちなく探っている感じでした。でも"Karate"で一番奥までお客さんがジャンプしているのを見てうれしくなりました! 私は自分たちがいつもやっていることをやりたいと思っていました―自分たちらしく、私たちのスタイルをお客さんにお見せするということです」

[キャプション:ラーズはまだ正しいキツネの掲げ方を覚えていない]

[キャプション:スゥは、自分のヒーローたちと一緒に共演することになるとは思っていなかった]

[キャプション:アトラス、立ち上がれー]

[キャプション:もうこの二人は解決していると思うかも知れない]

[キャプション:このトリオは、まったく新しい観客を獲得した]

[キャッチ:「私はまだぼーっとした気分でステージに上がりました」:スゥメタルには、これが自分たちにとって特別な夜であることがよく分かっていた]

任務を成功裏に完了したので、今度はBABYMETALがMETALLICAが新曲"Now That We're Dead"や"Halo On Fire"の世界初演を含む、18曲を駆け抜けるのを見る番だ。だが、スゥメタルが特に興奮していたのは、観客がすべての音符をシンガロングし、アルバムの白い十字が、前面の巨大なスクリーンに表示され、METALLICAがリフを演奏するお気に入りの曲、"Master of Puppets"だった。「あの大合唱を聞き、METALLICAさんが、あのものすごい数の観客を魅了している姿は本当にすごかったです」とスゥメタルは言う。

[キャプション:モアとその道を切り開くバンドにとって限界はない]

[キャプション:新しい音楽に対する遠慮のないチャンピオンであるラーズは、BABYMETALを連れてきたことをうれしく思っているというのがフェアだろう]

またこの晩も出会いとセルフィーの時間があり、ラーズ、ジェイムズ、カーク、そしてロブが、笑顔を浮かべ、あの象徴的なフォックス・ゴッドのマスクを手にして、三人とポーズを取った。スゥは、伝説たちとの再会について謙虚なままだった。「私たちはいろいろなことをお話しできました。でも「今日来てくれてありがとう」と言われたときに、本当にうれしかったんです」

日本のヘドバン誌の創始者である梅沢直幸は、このショーのために飛んできた。彼は両バンドは良い組み合わせだと見ている。「ヘビー・メタルの頂点であるMETALLICAが、そのツアーの前座にBABYMETALを選んだという事実が自ずから物語っています」と彼は言う。「METALLICAはメタルに対して異なったアプローチを試しています。伝統的で権威があり、正統派のブリティッシュ・メタルを演奏するIRON MAIDENのようなバンドからは「ノー」と言われるかも知れませんが、BABYMETALがMETALLICAから受け入れられたのは、メタルは実験するべきだとMETALLICAが考えているからだと思います」

[キャッチ:BABYMETALの務めはメタルの将来のために忠誠を尽くすこと:コバメタルは将来の世代のためにBABYMETALが道を照らすことを望んでいる]

METALLICAは30年以上に渡って重要な存在であり続けてきており、これは、コバメタルがその音楽、イメージ、そしてこれであると適確に指摘できない何かをMETALLICAが常に進化させてきた結果としての偉業である。「常に前進しようという彼らの姿勢だと思います。サウンドだけでなく、メタルの心を持つバンドだからだと思います」とコバメタルは主張する。

いま、その信じられない旅路における新たな一歩によって、BABYMETALも同じような成功を再現することが期待されている。コバメタルは彼女たちの成功を誇りに思っているばかりでなく、自分が一生懸命頑張り、そう信じるならば起こりうるものに対する希望の指針として、次世代が道を拓くことにBABYMETALが貢献できると信じている。

[キャプション:奇妙な光がジェイムズのギターを照らしている。これはBABYMETALのキツネの神からのしるしだろうか?]

「私の意見では、BABYMETALよりも一世代か二世代上であるMETALLICAと同じステージで演奏できたことは、BABYMETALにとってばかりでなく、メタル・シーンの将来の世代にとっても重要な瞬間でした」とコバメタルは言う。「二つのバンドが演奏するのを見て、私はBABYMETALの務めは、メタルの将来のために忠誠を尽くすことだと感じました」 

スゥメタルにとって、この夜はわずか三年前に、METALLICAがサマーソニック・フェスティバルで演奏するのを見た日に生まれたビジョンに対するこの上ない結びとなった。スゥメタルは、かつては自分にとっては場違いに思えたジャンルに身を投じ、その過程で、グローバルなヘビー・メタル・コミュニティーの一部となった。君がいまだにBABYMETALに対して皮肉屋の立場を取っているとしても、彼女たちが長い道を旅してきたことは認めざるを得ない。私たちの世界の最高のアイコンとステージで共演したヘイターなど存在しないのだ。

「メタル文化の一部になって最高のことは、私たちが前は知らなかった新しい世界の扉を開けたことです」とスゥメタルは不思議がっている。「私たちが学べるものがもっとたくさんあり、新しい何かを試してみたあとで、楽しいかも知れないと分かりました! 私はもっと強くなったと思います」

「君を殺さないものは、君をもっと強くする」というジェイムズ・ヘットフィールドの不滅の名言がある。スタジアムで目標を達成したあとで、今のバンドの目標は何かとたずねてみたが、スゥとコバはおなじみの「Only the Fox God knows」ではねつけた。私たちに分かっているのは、コバは、これを超える何か本当に魔法のようなものを考え出さなければならないだろうということだけだ。

▼元記事
メタル・ハマー2017年3月号




2 件のコメント:

  1. うーん、まとめて読み返すと「くる」なぁ。ありがとうございました。

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  2. 全文訳、どうも有り難うごさいました。
    コバも3人もどんどんハードルを上げて来る。
    「次はなんだ?」
    これこそエンタメの本質だと思う。

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