2016年7月3日日曜日

[Big Issue North] ベビーを育てる

ベビーを育てる

マーク・ウィーラー(Big Issue North 6月27 - 7月3日号)

見た目はカワイイかも知れないが、BABYMETALはメタルのどら声でマッチョな世界に革命を起こしている。いま、十代のアイドルたちが大人になる中、否定する者は少数派になったとマーク・ウィーラーは言う。




ダウンロード・フェスティバルの週末で唯一の太陽の出た時間、金曜の午後早くに、私たちはメディア・ガーデンに座っていた。突然ゲートをBABYMETALが歩いて抜けてくると、忙しく、興奮であわただしくなった。すぐにそれと分かる、このなかなかつかまらない日本人のティーンの三人組は、そのカワイサ、ブルータルさ、メタル、Jポップで、どこへ行こうと、人々を集めてしまう。

三人は、小人数だが効果的な随行団を伴っており、その中にはサーセイ・ラニスター(海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の登場人物)の新しいお気に入りの騎士を思わせるセキュリティー・ガードも含まれていた。このガードは、一瞥だけで、BABYMETALの周囲に人だかりができないようにしていた。

興奮し、不安そうで、当惑した様子でありながら、なお自信を持って、女の子たちはうれしそうに何枚かスナップ写真を撮影するためにちょっと時間をくれ、それからせかされるように、自分たちのセットの準備に向かった。私たちはあとで、スゥメタルこと中元すず香と、話をするチャンスがあった。多くの日本のものがそうであるように、とても効率的だった。

ショーを見るためにメイン・ステージに向かうと、まだ日が出ていて、私たちはナイーブにも、レインコートをバックステージのロッカーに置いてきてしまった。大きなミスだ。BABYMETALのセットの直前に、土砂降りになった。私は肌までびしょ濡れになるはめに陥った。天気のために遅れ、スタッフがステージの水たまりを拭き取ってから、BABYMETALがようやく、有頂天の歓声の中、登場した。バックを務めるのは信じられないほど才能のある神バンドだ。

「ものすごい雨が降る中、皆さんは私たちのステージの前に立って、最後まで私たちを見ていてくれました。ステージからは本当にものすごい眺めでした」とバンドの18歳のシンガー、スゥメタルは言う。雨は土砂降りだったが、だからといって、彼女の求めに応じて、熱狂した観客がサークル・ピットを作らないことはなかった。「私たちのライブは、とても強烈なので、雨が少しクールダウンしてくれました」

私が最初にBABYMETALをライブで観たのは、昨年のリーズ・フェスティバルだったが、女の子たちはもうほとんどのロック・フェスティバルで演奏しており、わずか数年の間に、どんどんプログラムの上の方に上がっている。「英国のダウンロードは、本当にすごかったですけど、どのフェスティバルも違った経験をもたらしてくれますので、どれか一つを選ぶことはできません」とスゥメタルは言う。

「お客さんがたぶん一番違うと思います。英国では、皆さんが自分のやり方でショーを楽しんでいます。最初はいつも、私たちのことを見たことがなくて、どう反応していいのか分からないお客さんが見えます。でも、セットが終わる頃には、いつもみなさんがフォックス・サイン(BABYMETAL版のメタル・ホーン)を掲げてくださるのが見えます。ですから皆さんがショーを楽しんでいてくださるのが分かります」

日本で何年もアリーナをソールドアウトしてきたBABYMETALは、最新の「Metal Resistance」アルバムで英国チャート最高位を記録し、ウェンブリーで初めてのヘッドライナー・ショーを行い、マーチャンダイズ販売の記録を打ち立てた。

「私たちは英国で本当にいろいろなことを経験させていただき、とても恵まれています。フル・ツアーについてはフォックス・ゴッドにしか分かりません!」と現在のツアーとBABYMETALの存在の背景となっている神話について話した。フォックス・ゴッドが、女の子たちを、メタル革命のヒロインとして選んだのだと言う。そのショーは、しばしばその使命を説明するビデオで始まる。

献身的なファンベースを持つBABYMETALは、成功を収めてきたが、それでもフォックス・ゴッドのやり方とメタルの世界にBABYMETALを含めることを否定する一部の人間(不満だらけの昔ながらのエリート主義者たち)が存在する。先月、WHITE ZOMBIEのフロントマンでホラー映画監督のロブ・ゾンビが、BABYMETALと一緒に撮影した写真をフェイスブックに投稿したあとで、自分のファンがネガティブなコメントをポストしたことに対して反論したことで騒ぎになった。

スゥメタルは言う。「まず、ロブさんが私たちにやさしくしてくれたことに感謝します。ロブさんが応援してくださってとてもうれしいです。私たちがやっていることが嫌いな人もいると思いますが、それは構いません。私たちは自分たちが正しいと思うことをやり続けたいだけですから」

ゾンビはまたファンに対して、女の子たちは自分が一緒に演奏したことがあるバンドよりも90%多くのエネルギーを持っていると告げた。それはどこからくるものだろうか。「私たちが行く国のいろいろな美味しい食べものと、私たちのファンの皆さん、それにショーにきてくださる皆さんのおかげです。私たちはショーに来てくださる皆さんにとにかく楽しんでいただきたいんです」

ファンの一人が、JUDAS PRIESTのフロントマン、ロブ・ハルフォードで、間もなく共演することになっている。どら声の毛むくじゃらの男たちが支配するジャンルで彼女たちが受け入れられている理由の一つは、年長者たちに対する敬意だ。

「この素晴らしい機会を本当に名誉に感じています。ドキドキしていますが、それよりもワクワクしています。どのバンドもクールで、本当に多くのレジェンドとステージを一緒にやれることをうれしく思っています」

もしBABYMETALが顕在かどうかを問わず、レジェンドのどれか一つだけと共演できるとしたらとたずねてみた。「私たちは本当に多くの皆さんを尊敬しています。どうして一つだけ選べるでしょうか?」

2011年に結成されたBABYMETALのファンベースは、しばらくはニッチのままだったが、2014年にSLIPKNOTやSLAYERがうらやむようなリフで支えられた、キャッチーでアップテンポのダンス・ポップ・ナンバー、"ギミチョコ!!"がバイラルになってから、西洋での成功が始まった。以降、バンドにとって後戻りはできなくなり、ファンはそのジャンルをカワイイ・メタルというカテゴリーに当てはめている。

「これはメタル・サウンドとカワイイの影響を融合したものです。たとえば、私たちのダンスやルックスですね。私たちは自分たちがやっていることについて、オンリーワンになろうと努力しています。私たちの目標は、BABYMETALという新しいジャンルを作ることだからです。

仲間のメンバー、モアメタルとユイメタルがもう16歳と17歳になるいま、バンドが大人になりつつあることは、新譜が示している。音楽は前ほどJポップとメタルを重ねたものではなくなり、より一貫性のある両者のブレンドとなった。さらにリフはもっとヘビーになっている。

「私たちはライブを通じて、ファンの皆さんと一緒に曲を育てていきます。私たちがワールド・ツアーで学び、吸収したことすべてが、間違いなく、私たちの曲に反映されています」

西洋での成功と共に、ちょっとしたジレンマも生まれている。多くの海外のバンドは英語で歌うことで、より幅広い観客に届くようにしている。でもドイツのバンドで金曜日の夜のヘッドライナー、RAMMSTEINは自分たちの母語にこだわりながら、なおすばらしい成功を収めている。BABYMETALは変わる予定はないようだ。

「私たちは"THE ONE"の英語バージョンを制作しましたが、これはこの曲が一つの音楽を通じて皆さんを一つにすることを歌っており、世界中の私たちのファンの皆さんに届くには、英語が一番よいだろうと考えたのです。私たちは今後さらに英語の曲を作るかどうかについて考えていませんが、自分たちが日本の出身であることを誇りに思っており、日本語は私たちにとってとても大切なんです」

成功も彼女たちの頭にはないようだ。「本当に多くのミュージシャンの皆さんが、ものすごいことをやっているので、私たちだけではないんです」とスゥメタルが彼女らしい人当たりの良さで語った。「私たちはただ、自分たちのやっていること、そして音楽を信じていて、最高の音楽と最高の演奏を皆さんに届けようとがんばっています」

▼Big Issue North
http://www.bigissuenorth.com/


17 件のコメント:

  1. 「私たちのライブは、とても強烈なので、雨が少しクールダウンしてくれました」

    これ(日本語でどう発言したかわからないけど)本当にこういうこと言ったとしたら,なんかすごいな。自分たちのライブに対する確固たる自信が感じられる。

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    1. 原文読んだけど、自分たちが激しく(動く)ので、(疲れる)というニュアンスかな。

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  2. いつもと違うコメントが聞けたね。
    やっぱり、質問の質によってはちゃんと思ってる本人の言葉が出てくるんだと思う。
    このマーク・ウィーラーさんもちゃんとBABYMETALを尊敬の念でインタビューしてくれたことに感謝。

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  3. 長文の翻訳ありがとうございました!
    記者目線でのメディアのリアルな様子を垣間みれた貴重な記事でした。

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  4. さくら学院のマナー教育とプレゼン教育が効いてるね
    10代なのに本当に尊敬するよ
    大変なことだと思う 記者も同じことを感じたんでは・・

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    1. MステでKARATEやった時も、スタンバイ時に神バンドやスタッフに「宜しくお願いします」って言ってるのが聞こえるよね。
      さくら学院で鍛えられてきたから、自然に出きるんだろうね。

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    2. さくら学院のコンセプトは本当に凄い
      アイドル養成に社会人基礎力養成項目を入れてる
      商品としての技能教育だけでなく、芸能界に残らなくても困らない様に
      人格形成の要素を入れてる 非常に良心的かつ貴重な経験になるよね

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    3. 尊敬するね。
      さ学の小学生を追いかけるバケモノファンを相手にしてたんだからどんなことにも動じず見下さず本当尊敬する。メタル界のバケモノにもそりゃあ動じないわけだ。俺が親か子供なら毎日夢に出て不眠症になりそう。もう、プロフェッショナルと言うか、すうはいい意味でバケモノだね。自分も見習わなければ。。。尊敬してます。

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    4. アクターズ広島も忘れちゃいけんよ
      歌・ダンスだけじゃのうて挨拶も立居振舞いも
      授業に含まれてたゆうけえね

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  5. >どら声の毛むくじゃらの男たちが支配するジャンルで彼女たちが受け入れられている理由の一つは、年長者たちに対する敬意だ。

    西欧では、そんな当たり前のことまで崩れ去ってきているのかなぁ~_~;

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    1. 海外だとジャンル問わず若手のスターはある程度不遜な振る舞いが同世代に
      痛快と捉えられて人気を博す面があるからね

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  6. 不良っぽいポーズがカッコ良くウケる時代は終わってしまった感じだよね

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  7. 違うよw
    廃れきった、と言うか、邪道なメタルシーンだからこそ真面目な女性シンガーはギャップ萌えがあるんでしょ。
    世界のポップシーンだと全く話は変わってくるよ。ふーんくらいの印象。
    ギターをする人は不良だった時代があったように、もうこれからの時代は、HR/HMは真面目な人もやる。ベビメタはそのパイオニアでもあるということかな。

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    1. 一理あるね。
      共感した。
      HR/HMは、テクニックがある程度以上は求められることが多いのと、市場を開拓していかないと厳しいジャンルだと思うから、研究熱心で真面目で尚且つ商売気も技術研鑽も必要。
      それが時代を経て、その内、労働者階級の音楽から、お金も時間にも余裕のある中流階級以上の音楽に変わってしまうかもしれない。BABYMETALは、まさにそのきっかけを作ったバンドじゃないかと感じる。

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  8. SUちゃん素晴らしい受け答えだね

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  9. > スタッフがステージの水たまりを拭き取ってから
    この拭き取ってるのがベビメタのプロデューサーだとは、さすがにこの記者も知らなかったんだろうなw

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  10. 優等生発言かもしれないけれど、明るく前向きで礼儀正しいことにまちがいはないな、やっぱり。

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