メタル・ハマーが店じまいするかも知れない:その30年を振り返る
エリノア・グッドマン(2017年1月7日)
編集者のメモ:2016年のクリスマスの数日前に、メタル・ハマーやクラシック・ロックといったおなじみの英国の音楽誌の出版社であるチーム・ロックが、社員に対して同社が財産管理(英国における破産の婉曲表現)の下に置かれると発表した。73人のジャーナリストが12月19日に、給与や契約解除金すらなく解雇された。この73人の記者の一人であるエリノア・グッドマンは、どのように自分や同僚たちがこの発表を受け止めたのか、その後の日々、そしてどのように助けるためにメタル・コミュニティーが団結したのかについて書いている。
それはありふれた月曜だった。私たちは午前中、プログ誌のステレオにかかる明るいフルート音楽と友好的な競争を行いながら、チーム・ロックの事務所でメタルを爆音で鳴らして過ごしていた。私たちは次の2号についての会議で午後を送り、2017年にメタル・ハマーが成功するようにアイデアを出し合っていた。それから、部屋の真ん中に集まるように求められたが、そこでは笑顔のない男女が、分厚い封筒の束を手にしていた。彼らは、クリスマスの6日前に、会社が財産管理に入ったこと、そして私たちは失業したと語った。私たちは12月の給与も、契約解除金も受け取れない。
誰もがショックでお互いに顔を見合わせた。中には自分たちの賃料やローンの支払についてパニックに陥り始め、あわてて家族に電話をした。他の者たちは抱き合った。涙が流れた。夢のような状態で、私たちは解雇通知を受け取り、ジャックやコークを飲むためにパブにふらふらと出向いたが、そこでこのニュースが実感されてきた。
請求を支払うことについての胸が締め付けられるような心配、そして誰も人を雇わないクリスマス・シーズンに職探しをすること以上に、悲しみの感覚が広がっていた。編集チームの多くにとって、メタル・ハマーで働くことは単なる仕事以上のものだった。それは生き方だった。私たちはみな、この雑誌を読んで育ち、ギグで夜を送り、フェスティバルで週末を過ごし、数え切れないほどの時間、音楽を聴いてきた。私たちがそうしたのはメタルが大好きだからであり、自分たちの熱意を分かち合いたかったからであり、ハマーの豊かな歴史の一部であることに誇りを持っていたからだ。
1986年に創刊されて以来、メタル・ハマーは、MAIDENやMETALLICAのような巨人をフィーチャーするばかりでなく、上り坂のスターやアングラのサウンドを擁護して、世界最大のメタル・マガジンとして君臨してきた。最も長く勤務してきた編集者、アレキサンダー・ミラスの下、最後の10年、チームは各賞を受賞し、SLIPKNOTやSLAYERなどの独占カバー・ストーリーを発表し、英国の調査で、メタルを宗教に含めさせさえした。
2016年は記念碑的な年になった。アレキサンダーが新しい編集者、マーリン・アルダースレイドに跡目を譲り、ハマーが30周年を迎えたからだ。私たちは、過去を認めると共に、より重要なことに、しっかりと将来を見据えた、偉大なアーティストから優れたアーティストまで30の新しいインタビューを含む特別号を発行した。私たちはメタル・ハマーを録音した。スポットファイのためのMetal Hammer: In Residenceシリーズ・ポッドキャストではGHOSTからMASTODONまでインタビューした。CREEPERからCALLIGRAMまで新人バンドについて声を上げ、新しい音楽CDを含めた。また、グローバルなメタルをサポートし、最終号ではムンバイのDEMONIC RESSURECTIONに1ページを割いた。メタル・ハマーはアジア、オーストラリア、北米、そしてオンラインで販売された。私たちの声はこれまでになく大きく、私たちは今までになく広く届き、私たちはものごとを先に進めようとしていた。会社の閉鎖と共に、ハマーはその最盛期に倒されてしまったと感じていた。
オフィスでの最後の日に、一人の女性が、15歳の娘へのクリスマス・プレゼントとして定期購読したいという電子メールをくれた。彼女は、2017年の第1号を受け取るはずだった。これは、刷り分けになる予定で、まったく新しいカバー・スター3組、すなわち(今月ロンドンの収容人数5,000人のブリクストン・アカデミーで英国における最大のショーを行う)スウェーデンのパワー・メタラー、SABATON、(現在実際よりドラマティックなフロントマン、ダニー・ウオースノップを迎えたばかりの)ASKING ALEXANDRIA、それに(ものすごいシンガー、リジー・ヘイルをフロントとし、新しいEPを出す予定の)米国のロッカー、HALESTORMを紹介するはずだった。私たちの遺産に対する敬意として、私たちはまた、ANTHRAXの「Among the Living」の30周年ツアーに捧げる4番目の限定版カバーも用意した。私たちは次世代の音楽、そして次世代のファンに語りかけることについてわくわくしていた。
私たちの失望にもかかわらず、あの月曜日にパブで起こったのは注目すべき事だった。まず、私たちの電話は、業界の友人たちからのサポートのメッセージで点灯した。二番目に、英国のバンド、ORANGE GOBLINのシンガーであるベン・ワードが、ガールフレンドと一緒に、チーム・ロックのスタッフのために2万ポンドを募金するJustGivingクラウドファンディング・キャンペーンを始めた。私たちはどう反応していいのか分からなかった。個人的に私たちのために募金してくれていることで照れくさかったが、この優しいジェスチャーにびっくりしていた。
世界中のビジネス仲間、読者、友人、家族、そしてバンドからの寄付が溢れ始めたのはものすごい驚きだった。目標はすぐに達成され、そのページのコメントには泣かされた。「ピットで言うように、誰かが倒れたら、君が助け起こす」とコメントの一つにあった。「私の愛する雑誌、メタル・ハマーのスタッフにこれをやってくれてありがとう。そのおかげで、長年に渡り、私は多くのバンドが好きになったんだ」と別のコメント。
時間が過ぎて行くにつれ、キャンペーンには勢いが付き、米国の音楽業界のウェブサイト、ビルボード、英国のメディア・サイト、プレス・ガゼット、ザ・ガーディアンのウェブサイト、ロンドンのイブニング・スタンダード紙、そしてBBCラジオ5ライブで取り上げられた。
私たちは言葉もなかった。AVENGED SEVENFOLD、MACHINE HEADといったレジェンドが寄付してくれたからだ。
「メタル・ハマー、クラシック・ロック誌、そしてプログ誌はもはや存在しない」、AVENGEDはフェースブックにポストした。「もし英国を旅したことがあるなら、どの雑誌スタンドにも、メインストリームで認められる他の印刷物のすべての隣に、この3つの雑誌によってヘビー・メタルが突出してフィーチャーされていることに気付いたはずだ。いま、それはなくなった。平均的な意識から、メタルやロックをさらに遠くに押しやってしまった。中には、ヘビー・ミュージックをアンダーグラウンドに保つべきだと信じている者もいる。俺たちはそう思わない。この音楽は、自分自身を含め、あまりに多くの人々にとって、あまりに大きな意味がある。俺たちの音楽はインクルーシブであるべきであり、メタル・ハマーを失うことは、俺たち皆にとって大きな一撃だ」
これはメタル・ハマーの死亡記事だろうか? 私たちにはまだ分からない。誰かが名前と資産を買って、以前の従業員の有無を問わず、あるいは別のかたちで、続けるかも知れない。あるいは消えてしまい、シーンに穴を残すかも知れない。スタッフにとって、現実はいまだに辛いものだ。会社と倒産の取り扱われ方について怒りはあるし、政府からの金銭補償と求職者手当を申請するという立場を強いられたことについてフラストレーションもある。
雑誌で働くのはいつでもリスクだが、私たちはハマーがいつも安定した立場にあると保証されていた。
次に何が起ころうと、私たちのコミュニティーからの溢れんばかりの寛容に恐れ入り、その言葉や行動によって永遠に元気づけられる。キャンペーンの合計は現在85,000ポンドで、今週ORANGE GOBLINがベネフィット・ギグを行う。その姉妹紙のプログとクラシック・ロック(1月4日に発売になったので、「Metal Resistance」の最終号も出版される可能性はある)と共に、メタル・ハマーが私たちが思っていたよりもずっと多くの人々の心の琴線に触れてきたことは明らかだ。永遠の神、レミーの言葉を借りれば、ロックンロールは決して死なない。
著者は、メタル・ハマーの元編集者で、10年に渡り、音楽やオルタナティブ文化について書いてきた。ツイッターは@eleanorgoodmanだ。
ここからチーム・ロックのクラウドファンディングに寄付することができる。
▼元記事
Metal Hammer magazine could be closing down: A look at its 30-year run
すうは1円玉貯金を崩しただろうか?
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