2017年4月13日木曜日

[Lost in the Miso] 音楽レビュー:BABYMETALの「Live at Budokan: Black Night Apocalypse」(過去記事)

音楽レビュー:BABYMETALの「Live at Budokan: Black Night Apocalypse」(過去記事)

マイケル・B・マーフィー(2015年2月16日)




ホーンを掲げ、ヘッドバンギングせよ、ハード・ロック・ファンよ—世界の新しいメタル・マスターがやってきたが、彼女たちはまだ高校生だ。

17歳の中元すず香(スゥメタル)、二人の15歳、水野由結(ユイメタル)と菊地最愛(モアメタル)、それに達人ミュージシャンのバック・バンドで構成されるBABYMETALが、ここ何年もの間の最高のライブ・アルバム、「Live at Budokan: Black Night Apocalypse」を届け、そのリリースで懐疑主義者を黙らせ続けている。

母国日本で2010年にシーンに登場して以来人気のあるBABYMETALは、実にいかれたライブ演奏のビデオがオンラインでバイラルになってから、世界的な注目を集め始めた。だが、西欧のメタルヘッド—おおむね男性—がBABYMETALは芸が一つしかないものとしてあざ笑い、忘れ去る中、奇妙なことが起こった。バンドはデビュー・アルバムをリリースし、これは一番でないかも知れないが、2014年の最高のメタル・アルバムの一つだったのである。グループの謎めいた創設者、コバメタルがプロデュースしたこのアルバムは、米国と英国の両方で、iTunesのヘビー・メタル・チャートの一位になった。

ヘビー・メタルと日本のポップ音楽(Jポップ)の法外な縁組みといった表現が一番合っているサウンドによって、BABYMETALはここ12ヶ月の間、世界中をツアーして周り、特にレディー・ガガの前座を務め、また昨年の欧州のハード・ロック・フェスティバル、ソニスフィアで圧倒的な公演を行い、METALLICA、SLAYER、そしてIRON MAIDENのようなメタルの象徴と共に演奏し、メタル・コミュニティーの多くを怒らせながら、ダイハードなファンの軍団をあっという間に作り上げた。真面目な話だ—入れ墨をした怒れる大人の男たちが、BABYMETALのメタル界で高まり続ける人気にほとんど泣きそうになっているYouTubeビデオが山ほどある。

バンドがそのコンサートで好意的な注目を集めていることを考えれば、コバメタルとその小悪魔たちのバンドが、ライブ・アルバムをリリースすることに不思議はない。世界的に有名な屋内アリーナ、東京の日本武道館—ボブ・ディラン、オジー・オズボーン、そしてCHEAP TRICKといったアーティストによる多くのライブ・アルバムの会場—で録音された、このソールドアウト・コンサートは、息を呑むほど楽しく、印象的な公演となっている。

「Black Night Apocalypse」は、グループは冗談に過ぎないと責めてきた者にとって、巨大な中指を立てたようなものであり、BABYMETALとそのものすごく才能のあるスタジオ・ミュージシャンによるバック・バンド、神バンドは、異常な速さのポップ・メタルによる、くたくたになるような73分のセットを提供している。

["ギミチョコ!!"ビデオへのリンク]

アルバムのオープニング・ナンバー、"BABYMETAL DEATH"は、たたきつけるようなシンフォニック・デス・メタル・ナンバーで、バンドはポップ音楽のプロデューサーに創造されているにもかかわらず、これが極めてメタル・バンドであることをただちに明かしてくれる。「ベビー」と「メタル」という言葉がおぞましいグロウルによって繰り返される。蛇のようにくねるギター・ラインとうなるベースの低音に合わせて、ばかでかいドラムが失踪する中、「デス」は叫ばれる真言となる。スゥメタル、ユイメタルそしてモアメタルに対する予感が熱のように高まり、一人一人のメンバーが自分の名前を紹介し、その間ずっと「デス」のスクリームが武道館を一杯にする。たぶん、これは昨年ニューヨークのショーで演奏された曲で、熱狂した観客がウォール・オブ・デスを作り上げたものだろう。

グループは、2曲目でそのばかでかい音を抑えるが、これは下品なユーロ・クラブ・ミュージックとしか表現できないものから、スカの影響を受けたタッピング風のビートとなり、女の子たちはこれまで聴いたことのないようなキャッチーなコーラスを歌う。ふさわしく"いいね!"と名付けられたこの曲は、どんなバンドのサウンドにおいてもきちんと共存できないはずの異なったジャンルを自在に出入りするという、このバンドの恐れ知らずの、あるいは精神分裂的な能力を良く示すものだ。何てことだろう、この曲のブレイクダウンは、モアメタルが韻を吐き出す間、クランク・ラップのビートをフィーチャーしているのだ。

モアメタルと仲間のシンガー兼ダンサーのユイメタルの甘くて楽しいボーカルはこれ以上甘くなりすぎることはない。その"4の歌"における「はい! はい!」というパンクのようなチャットは、観客をそれと聞こえるほど盛り上げ、その"ギミチョコ!!"における超高速の声のやりとりは伝説のロック・ボーカリスト、マイク・パットンのような連中を印象づけるだろう。

だがこのアルバムで本当に傑出しているのは、バンド・リーダーのスゥメタルの多彩なボーカルとステージにおける存在感だろう。彼女は苦もなくゴシックでオペラ的な"悪夢の円舞曲"に不安を注ぎ込み、"メギツネ"では虚勢を持って歌い、インダストリアル・メタル風の"Catch Me If You Can"におけるコーラスには吹っ飛ばされる。

スゥメタル、ユイメタル、モアメタル、そして神バンド—多くのインストゥルメンタル・ブレイクが陥りがちな自己満足的で退屈なものになることを避けた、驚愕のインスト・トラックを演奏している—は、「Black Night Apocalypse」で、メタル音楽の風景を横断し、ポップの喜びの光をもたらす。一つ明らかなことがある。怒り狂ったメタル・ファンは、BABYMETALを罵倒しようとする不毛な試みはやめて、新しい小さなメタル・マスターたちにおじぎすることを学ぶべきなのだ。

▼元記事
Music review: BABYMETAL’s “Live at Budokan: Black Night Apocalypse”




1 件のコメント:

  1. こんにちは :) Thank you for sharing my BABYMETAL review on your blog. ありがとうございます! - Michael from Lost in the Miso

    返信削除