[Hysteria] フラッシュバック//BABYMETAL:キツネの力により……BABYMETALは成功する(過去記事)
トム・バルカニス作(2017年11月2日)
日本は東洋としては限りなく西洋だ。東京は、巨大なオレンジの東京タワーが突き刺さった灰色の海だ。宇宙から見れば東京は他の大都市と変わらない。地上では、ネオンの光が原宿の人々の顔を照らす。子供たちは秋葉原のアーケード街を人をかわし、縫うようにして進む。酔っ払ったサラリーマンが、家に向かって真夜中に新幹線へとふらふらと歩いて行く。
私たち外国人が持つ日本のイメージは、漠然としたカワイさと奇妙さによるものだ。コンビニと昔ながらのやり方に対する服従の集合。西洋人にとって、BABYMETALはこのイメージの一部だ。マンガ、アニメ、そして狂ったようなゲームショーを反映している。どういうものかおわかりだと思う。それは火であり、カワイサだ。徹底的な赤と黒と踊り。それがBABYMETALだ。BABYMETALはポップとメタルの世界を席巻している。
フォックス・ゴッドの登場
ステージ上、ステージ以外で起こることのすべてが、BABYMETALの神話を創り上げている。プロレスのように、すべてが「真実」だ。現実世界で、十代のBABYMETALは日本のアイドル・ポップ・グループとして2010年に結成された。その目的は、カワイイ・メタル―すなわち日本のポップ(Jポップ)とヘビー・メタル音楽の邪悪なる融合―をプロモートすることだ。
この目的を達成するために、アミューズ芸能事務所は、前途有望な中元すず香(スゥメタル、18歳*)、水野由結(ユイメタル、16歳)、そして菊地最愛(モアメタル、16歳)を集めた。彼女たちのステージ上のペルソナと本当の自我の切れ目ははっきりしない。非公式には、プロデューサーのコバメタルが実際の歌唱とダンス以外のすべての面倒を見て、女の子たちのためにすべてを手配している。だとしても、彼女たちはより高次の存在、キツネ、すなわちフォックス・ゴッドに対しても応じている。
「BABYMETALが存在するようになってから、フォックス・ゴッドはいつも進むべき道を示してくれます」と、「お姉さん」であり、BABYMETALのリーダーであるスゥメタルは通訳を通じて語っている。返事が英語で返ってくるまで、二人の日本人の仮像が会話するのを聞いていると、筒を使って伝言ゲームをしているようだ。「キツネ様が私たちに啓示を与え、これから何が起こるのかを教えてくれます。だから私たちはフォックス・ゴッドを信じています。誰なのかはよく分かりませんが」
信仰がやりとげる。彼女たちの信仰が、伝統的なデビル・ホーンに代わる、フォックス・ゴッドのハンド・ジェスチャーにつながった。では信仰がBABYMETALを国際的なスーパースターの座に運んだのだろうか?
「新しい啓示がフォックス・ゴッドから明かされ、時には本当に大きなイベントだったり啓示だったりします」と私たちは告げられた。「時には、私たちも自分たちがやり遂げられるのか、それともやることができても、それはフォックス・ゴッドのおかげなのか分からないことがあります。フォックス・ゴッドは、そのお告げを実際に追究する勇気を私たちに与えてくれます」
先日のFuse.tvとのインタビューで、コバメタルは、フォックス・ゴッドを信じるかどうかは自分たちの選択であると懐疑者に対して語った。フォックス・ゴッドが本物であるならば、聖なる起源を持つ確実なリフと嵐を崇拝するメタルヘッドを使って、商業的なポップスの邪悪な領域へと入り込んだのだろう。
「BABYMETALを見に来たり、そのレコードを聴いたりする人々の中には、メタルを背景とする人も、ポップスを背景とする人もいらして、BABYMETALのおかげで、メタル・ファンがポップを聴いているように思います」と、はっきりとスゥメタルは語る。「ポップ・ファンはメタルを聴き始め、同じことはそれまで触れたことのなかったメタル・ミュージックに触れた子供たちについても同じことが言えます。両方のジャンルが含まれるので、お互いの成長に役立っているのです」
華やかさとカワイイの壮観
もし自分がヘビー・メタル・バンドにいたり、そうなりたいと思っていたら、目標はこの世で最大のメタル・ショーになることだろう。IRON MAIDENは魅力的なフル・アリーナ・ショーを通じて、その壮大さを示している。ピラミッド、スフィンクス、高さ9フィートのミイラのマスコット、エディが「Powerslave」を演奏するバンドについて回る。それが実現したメタルヘッドの夢だ。BABYMETALは薄汚れたクラブでとことん戦ったり、汚れたバンの床の上で寝たりすることを回避した。豊かな財力をバックに、濃厚な中身がすべて揃っている。エジプトや興行的なテーマの凝ったステージ。火、風、そして嵐。苦痛ぎりぎりの音量。それはフリルの赤と黒のドレスを着飾った、同じ原則なのだ。
「黒のTシャツを着るというようなシンプルなものではありません」とスゥメタルは通訳を通して語った。「例えば、私たちの色の中心は赤と黒で、これはメタルにおいても最初からとても目立っています。私たちはスカートをはきますがこれはとても女の子っぽくなっています。同時に、私たちは衣装に鋲などの要素を付けており、これは男性的というより、それ以上のもの、もっとメタルであることを示しています。何かとてもハードなものと、何かカワイイもの、よりソフトなものの組み合わせである私たちを表す何かとなっているのです」
ハロー・キティがゴスとなり、チェーンソーを振り回す美学が、彼女たちを日本、いや世界のロック・スターダムの高みへとのぼらせた。彼女たちは2014年3月に有名な武道館を満席にした。結成からわずか4年ほどのことだ。
「時々、BABYMETALは克服できるのか、あるいはやり遂げられるのか分からない時がありますが、それはフォックス・ゴッドが与えてくださるものです。おかげでフォックス・ゴッドが私たちに告げることを何であれ追究する勇気が与えられるんです」(スゥメタル)
「日本のアーティストにとって、(武道館)誰もが演奏したい場所です。子どもの頃、アーティストになることを夢見ていて、いつも武道館で演奏してみたいというのが夢でした。ステージに立ったときも、まだそれが現実だという気がしませんでした。お客さん、ソールドアウトの観客の皆さんを見て、(ようやく)自分たちが武道館にいるのだと分かりました。現実とは思えませんでした」とスゥメタルは言う。
思い出してほしいのは、これが誰も知らない中から選ばれた「メタル」バンドだということだ。これは平均年齢17歳のバンドだ。BABYMETALの前に、スゥメタルはメタルが何か知らなかった。彼女は仕事をしながら学ばなければならなかった。彼女にとって幸いなことに、彼女は最高のものから学んだ。
「私が最初にインスピレーションを得たのはMETALLICAさんです。はじめてライブで見たメタル・バンドでした。2013年にサマーソニックと呼ばれる日本のフェスティバルでのことです。とても違った体験でした。伝説のスターをステージで見たとき、METALLICAさんは次元が違っていたからです。音楽に圧倒されました。私がBABYMETALでやっていることを続ける上でのインスピレーションを与えて下さったことにとても感謝しています。METALLICAさんのところまで追いつけるよう努力したいと思います」とスゥメタルは語る。
彼女たちが西洋で注目を集めるのは時間の問題だけだった。アヴァンギャルドなものをいつも求めているレディー・ガガが2014年のアートレイヴ・ツアーの5公演の前座として彼女たちを招いたのだ。どこで演奏しようと、BABYMETALは疑念を払った。
「皆さんはBABYMETALのコンサートではなく、レディー・ガガのコンサートに来ていました。私たちはお客さんが、私たちのことを認めていないと感じました」
必要だったのは時間だとスゥメタルは回顧している。
「演奏しているうちに、お客さんの中にフォックス・サインを掲げている人が見えるようになりました。私たちはダンスの間、いつもファンに向かってフォックス・サインを掲げています。レディー・ガガのためのショーの間でも、ショーの途中で、フォックス・サインを掲げてシンガロングしているお客さんがいました。私たちが何を歌っているのか分からないのにです。レディー・ガガのショーでファンの皆さんから受け入れてもらったことはとにかく圧倒的な体験でした」
言語の壁のレンガに過ぎない
スゥメタルが言うように、BABYMETALが何を歌っているのか分かっている西洋人は多くない。(たまに英語のフレーズが入るが)すべてを日本語で歌い、曲の意味はなくなってしまう。日本のファンにとって、すべてはポジティブだ。シングルの"イジメ、ダメ、ゼッタイ"は通常のヘビー・メタルの内容ではない。
「私たちの音楽には、リスナーを勇気づけるようないろいろなメッセージが入っています。普通、メタルの歌詞はとても暗かったり、重苦しかったりします—私たちは従来のものから離れて、何か自分たちだけのものをやりたいのです。歌詞にポジティブなメッセージを入れることでこれを達成しています。メタルのアーティストではあまりないと思うので」
メタルとポップの世界で、BABYMETALは基本的な役割を壊したとして責めることはできない—つまらないことは言わないで欲しい。ファンがBABYMETALに夢中になるのはそのメッセージによるのではなく、音楽によるものだからだ。公式には認められていないが、BABYMETALは、クリストファー・アモット("イジメ、ダメ、ゼッタイ"のネメシス・ヴァージョン)、それに新譜、「Metal Resistance」の"Road of Resistance"を書いたDRAGONFORCEのハーマン・リとサム・トットマンのような頼めたる・アーティストとコラボレーションをしている。この曲のトレイラーは、スゥ、ユイ、モアが世界中で一杯に詰まった観客に向かってBABYMETALの旗を振っている姿を示している。何が人々を団結させているのかは明らかだ。
「私たちの音楽はキャッチーです。とても分かりやすい音楽です。私たちの歌詞がよりポジティブで勇気づけるものであることを含め、それがBABYMETALはどういうものなのかをまとめています。だからたぶん、通常の、あるいは伝統的なメタルに慣れ親しんだファンの皆さんの中に、BABYMETALに関心が持つ人がいるんでしょう。私たちは違うからです」
次にくるもの
BABYMETALは、象徴的なウェンブリー・アリーナで、4月1日—フォックス・デイ—に「Metal Resistance」を立ち上げる。メタル・バンドだけでなく、ほんの一握りのポップ・バンドが、このような権威あるかたちでツアーを始めることができる。彼女たちはアメリカと欧州を6月までツアーし、東京ドームでものすごい最終日を迎える。彼女たちは止められない。ヘイターは別に良い。
BABYMETALは、流れてしまった今年のサウンドウェイブ・フェスティバルに出演するはずだったので、ファンと見物客の両方を失望させた。彼女たちはオーストラリアに来るだろうか。
「Only the fox god knows」とスゥメタルは言う。「私たちがどこに行くのかを決めるのはフォックス・ゴッドです。でも行きたいですね」
アイドル文化とは?
西欧文化が有名人や巧妙さにとりつかれているとすれば、40年ほど前に日本人はこれを濃縮し、瓶詰めにした。異ドル文化はカワイさ、つまり若さ、美、そして魅力の別に皮肉によるものではない崇拝だ。芸能事務所は、それが化粧品であれ、雑誌であれ、インスタント・ラーメンであれ、製品をプッシュするためにアイドル・ポップ・グループを創り上げる。時には、グループが、より年上のアーティスト(だいた20代半ば)がメインストリームのアーティストになったり、姿を消したりする中、新しいタレントのための道具にすぎないこともある。今日のBABYMETALが今から5年後、あるいはもっと早くに今のBABYMETALとは違ってしまうことは極めてあり得る。スゥメタルはそのことを理解しており、説明している。
「日本のアイドル文化が海外で良く知られていない、あるいは日本独自のものであるというのは事実です。基本的にはアイドル文化として知られる日本のポップ文化です。日本独自の何かと世界中で知られるメタルの両方を組み合わせることで、BABYMETALには何か特別なものがあるのです」
初出:Hysteria #41(2016年4月)
*年齢は原稿作成時のもの
▼元記事
FLASHBACK // Babymetal: By Kitsune’s Power…Babymetal Prevails
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