「Metal Resistance」レビュー
UGティーム(2016年4月8日)
スコア:
サウンド 10
歌詞 8
全体の印象 9
評価 9
(読者評価は変動するため省略してあります)
サウンド:BABYMETALは、歌い、踊る3人の十代の女の子たちに神バンドとして知られる4人編成の楽器奏者を加えて構成されるグループである。その名前は、いずれにせよ、その音楽スタイルを象徴している。すなわち十台前半のJポップとデス/パワー・メタルを組み合わせたものである。十代のボーカルの才能のあるダンサーのペアが、達人のメタル・プレイヤーと組むというのは、できすぎた話だが、本当なのだ。BABYMETALの本当の始まりは、日本のアイドル産業に埋め込まれており、タレント事務所が才能のある(主に)若い女の子たちをシンガー、女優、モデルに変える代わりに、そのキャリアや生活を、契約でボーイフレンドを禁止するくらいまで支配する。A.V. Clubの記事(クリック)は、アイドル産業に対する良く出来た紹介になっているが、音楽グループの立場からすれば、ステロイドを使ったディズニー・チャンネルのポップスター産業について人々が考えるすべてだといえば十分だろう。
だがBABYMETALの場合、この仮説に対して興味深い例外が存在する。バッキング・バンドは、ライブでもスタジオでも、脚光を集める。曲には通常、ギター・ソロと長いインスト・セクションがあり、これは例えばセリーナ・ゴメスのアルバムだったら奇妙に思えるだろう。結果として、BABYMETALのために曲を書いている多くのミュージシャンたちは、自分たちの能力に挑戦することのない音楽を書いている、アングラの日本メタル・シーンのエキスパートのメタル・ミュージシャンであり、つまり自分たちが何をやっているのかを正確に理解しているということになる。このすべてから得られる重要な点は、(1) BABYMETALのアルバムは、最高レベルのプロフェッショナリズムにより企画され、制作され、磨き上げられている、(2) ソングライターが合流することで、非常に多様性のある音楽の集成となっているということになる。
BABYMETALのバンド名を冠したファースト・アルバムで、作曲家たちはJポップとメタルを、音楽が狭苦しいように感じられるところまでミックスした。これは実験だったように感じられる。コンセプトがうまくいくかどうかを確認するために、アルバムをまとめようとしたのだ。明らかに、このコンセプトは確かに人気を得て、誰もがこのセカンド・アルバムの作曲のために再び集まった。2枚のアルバムの間の大きな違いは、ファースト・アルバムの純粋なポップとメタルの2分化に比較すると、セカンドの曲の方がニュアンスが大きいという点である。曲が折衷主義的に集められていることは、その多様性においてLED ZEPPELIN的だ。LED ZEPPELINがブルース・ベースで膨大な音楽の領域を探求したように、このアルバムでBABYMETALは、デス・メタルやパワー・メタルに基づいて探求を行っている。このアルバムを一つのものとしてレビューするのが難しいのは、曲があまりに違うからだ。この項目の残りで、個別に曲を説明して、どれだけこのアルバムが多様性に富んでいるかということを示したい。
1. "Road of Resistance"
DRAGONFORCEのハーマン・リとサム・トットマンが、バンドと協力し、このアルバムで最も思い切ったパワー・メタルの冒険を行い、全体として最高の曲となった。メロディーとギター・ソロには、あらゆる場所にDRAGONFORCEの署名がある。だが曲が本当に輝くのは、そのリズムによる。これは息を呑んだり、革新的だったりするわけではないが、とてもうまく編み上げられていて、リスナーを期待させながらも、その複雑さで混乱させることがない。この曲は、5分間の間に多くのことを達成しており、それ故に賞賛されるべきだ。ついでだが、この曲はバンドのファースト・アルバムの2度目のワールドワイドのリリースではボーナス・トラックとなっている。
2. "Karate"
これはアルバムからのファースト・シングルで、たぶんそのメインリフは確かにジェントだがこのアルバムで最も大胆でない曲であり、とてもキャッチーなコーラスを理由として選ばれたのだろう。ニューカマーにはBABYMETALとは何かについてのしっかりした考えを与える。
3. "Awadama Fever"
この曲には多くのエレクトロニック・サウンドや、このアルバムの他の曲にも時々見られるスタジオ・トリックが含まれている。ただし、この奇妙さは、曲のそれ自体の部分を支配しているので、とてもキャッチーなヴァースやコーラスは、それ自体として輝くことができる。
4. "Yava!"
何よりもニッチ・ソングで、この曲はスカ・パンク寄りであり、何かとても楽しく、どこか不安な「スクービードゥー」の追っかけっこの曲のように響く何かを創り上げている。ヴァースのクリーンでアップストロークのギター・パートは、いずれにせよ、よりヘビーなコーラスで繰り返され、その後でスカ・バンドのホーン・セクションと考える事ができるシンセサイザーが、曲のメロディーを繰り返す。この曲は奇妙だが、またこのアルバムで私が個人的に気に入っている曲でもある。
6. "Meta Taro"
すごくシンプルなビート。この曲は昔の戦争の行進曲、米国で言えば"Yankee Doodle"のような、終戦後に学校の子供たちに教えられたような種類のサウンドとなっている。"ヤバッ!"同様に、この曲は何よりも珍奇なものだが、アルバムに確かに多様性を与えている。
8. "GJ!"これは二人の相棒、由結と最愛のみが歌う2曲のうちの1曲だ。最初のリズムは、スポーツ・イベントの手拍子のリズム(d d d - d d d - d d d d d d d)に似ている。曲は、ダブルダッチの縄跳び風に響くヴァースへと進み、コーラスは標準的なキャッチーなコード進行となっている。
11. "Tales of the Destinies"
このアルバムで最も摩訶不思議でクールな曲。作曲家は、ここではジャズ・フュージョンを探っており、多くがDREAM THEATERにとても似たサウンドだという。複雑な拍子(あるいは普通でない4/4)、それに山のような、奇妙なモーダルのシュレッドにも関わらず、この曲は女の子たちが歌うとキャッチーに響くことに成功している。また女の子たちが曲のタイトルを「コーラス」で歌うと、バンドがDEEP PURPLEのジャムのように響く短いセクションで応える。この曲は曲のメイン・ボーカル・メロディーを繰り返すクラシックなピアノ曲で終わる。これをライブでうまく演奏してのけるのをぜひ見てみたい。
歌詞:リード・シンガー(スゥ)、バックアップのデュオ(由結、最愛)のファースト・アルバムにおける躍動感は、ここで強化されている。スゥはリード・シンガーの力強く、正確な声を持つ。彼女の声は、ユイとモアの意図的に幼いキーキーした声に対して、真面目に受け取ることがでいる。スゥとユイ・モアの明確な対比も、BABYMETALを目立つものとしている一つである。また、アルバムの随所にクッキー・モンスターのボーカルがあり、通常はBABYMETALの「メタル・レジスタンス」と戦う邪悪な力を表している。
BABYMETALのファースト・アルバムは、最初は日本のみで発売されたので、すべての歌詞が日本語なのはおかしくない。しかし、BABYMETALが世界的なアピールを持つことが分かると、権力者が、BABYMETALの曲は英語を含まなければならないと決めた。このアルバムには、ほとんどすべての曲にいくつか英語の単語が含まれる。アルバムのエンディング曲、"The One"は、完全に英語で歌われた初めての曲だが、日本では英語と日本語の混ざったバージョンがリリースされている。
全体の印象:このアルバムで、BABYMETALは音楽的な存在として、はるかに興味深いものとなった。かつてはギミックだったものは、今ではシリアスな音楽上の取り組みとなっている。グループの状況に関する意見にかかわらず、この音楽は多様で、良く書かれており、何よりも(この踊っている子供が示すように)楽しい。ほとんどすべてのコーラスがすぐに覚えられるし、曲毎に十分に違っているので、アイデアが繰り返されているとも感じられない。さらに、ギター・ソロはメロディアスで追いかけやすく、それでいて退屈することがない。
こうしたアルバムに対するアイデアが支離滅裂である、あるいはばらばらだとする者もいる。だが、私にとっては、このアルバムのバラエティはBABYMETALとそのカワイイ・メタル・ブランドは、考慮すべき勢力だと証明している。もしロンドンの12,500席のウェンブリー・アリーナでの演奏が何かを示しているとすれば、BABYMETALが自称するメタル・レジスタンスは、急速に勢力を拡大している。
▼元記事
https://www.ultimate-guitar.com/reviews/compact_discs/babymetal/metal_resistance/index.html
ピーター・バラカン問題がちょうど起きていたときなので、この記事訳していて面白かったです。彼は基本的にHR/HMが理解出来ない人なんですね。LED ZEPPELINがダメという人だから。だから自分が思ったのは、「YMOについては、番組の前からメディアを通じて少しは耳にしていましたが、ぼくは全く評価できません。先入観ではありません。あんなまがい物によって日本が評価されるなら本当に世も末だと思います。」と誰かが言ったとして、それを彼が素直に受け入れられるかどうかだと思ってます。(ちなみにYMOは好きですが。)
返信削除最近の人は知らなかったかもしれませんが、ピーターさんは昔から音楽に関してはああいうスタンスです。(商業的、ギミック的な要素が有る物を嫌い、ルーツに近い方が素晴らしいってスタンスです)
削除良く言えば音楽に対して真摯でコア(根元)の方に向かい、革新的、楽しい等と言う事はあまり評価対象に成っていないんだと思います。
個人的に疑問なのは、なぜピーター氏にコメントを求めに行ったのかです。
そう言うスタンスが元で番組降板とかした事も有る人なんで、業界人なら(良いコメントはしないと)知っていると思うんですが、無知なのか、反対コメントが欲しかったのかどっちでしょう?
個人的にピーター・バラカンさんは好きです。
返信削除昔放送していたアメリカCBS系報道TVを扱う番組はよく見ていましたし、
音楽系ラジオ番組は好きで今でも時間があればたまに聴いています。
以前NHKで週一で放送していた「BBC ROCK LIVE」は全て録音保存していました。
今回のこの発言があってもそれは変わりません。
年齢や性別、人種を理由にしたものではない、
単に一個人が音楽的嗜好が異なることを明確にしたに過ぎない発言だからです。
元々メタル側の人間という違いはありますがキム・ケリーさんの例もありますし。
上記のFM放送「BBC ROCK LIVE」を聴くに、
Led Zeppelinに関してもそんな感じで、
「自分が好んで聴くモノではない。」っていう程度。
因みにジミーペイジ氏によって編集されまくった正規アルバム音源ではない、
「BBC ROCK LIVE」で放送されたBBCの元々の音源だと一曲目の「移民の歌」は、
ロバートが入りをミスって演奏を自ら止めてあらためて歌い直してるんだ4。
「BBC ROCK LIVE」の語り口調から判断すると、
ピーター・バラカンさんは自分も大好きなSoft Machineはそこそこ好きっぽい。
自分が好まないものに対し「まがいモノ」「世も末」などの表現を用いることは、単に個人の嗜好の違いを明確にするためには不必要な、相手を軽蔑した侮蔑的表現だと私は思います。
削除翻訳をありがとうございます
返信削除非常に丁寧なレビューに好感が持てた。レビューの中にLED ZEPPELINとDEEP PURPLEの名が出てくるのが嬉しかった。
ピーターバラカン氏に対しては匿名氏ご指摘のとおりだと理解している。
しかし、
1)レビューで批判するならまだしも、ツイッターや電話でふつう使わない言葉を使ってまでBABYMETALに嫌悪の感情(侮辱というレベル)を示したのには驚きだった
2)そんな侮辱や中傷を愛する者(例えば妻子とか。今回はベビメタ)が受けたとき、人間としてどうすべきか
相手を侮辱し返し罵倒して戦ったらいい!と思ってしまう寸前に、Redditで「イジメ、ダメ、ゼッタイとBABYMETALが言ってるじゃないか」というコメントを読んで、ちょっと泣けた。彼女たちは何と大きな愛に支えられているんだろう!ピーターは可哀想(な人)なんだ
3)反対コメントが欲しい力が働いた。醜い世界だよね。
訂正します
削除誤)「ツイッターや電話で」→正)「ツイッターやテレビ番組で」