メタルを曲げる:マーティ・フリードマンがBABYMETALインベージョンに挑む
[訳注]公式の訳文がこなれた訳としてまとめられているということで、より逐語訳的な意味を知りたいとのリクエストがありましたので、BABYMETAL部分のみを訳しています。そのような理由から、公式の方はあえて参照せずに訳しています。以下の文体の違いはこのような理由によるものです。
ルールを破る
インタビュワー:最初にBABYMETALを聞いたのはいつですか?
フリードマン:最初にグループと会ったのは2011年10月で、シングル、"ド・キ・ド・キ・モーニング"をリリースしたすぐ後だった。音楽は良いと思ったが、正直なところ、彼女たちが続けるかどうかは分からなかった。まだ10歳か11歳で、6ヶ月で諦めるだろうと思った。素晴らしい仕事をしたけれども、普通の小さな女の子たちだった。続けてくれて嬉しいよ。ヘビー・メタルとアイドル音楽の世界全体を刷新してくれたからね。
インタビュワー:アイドル音楽とヘビー・メタルのハイブリッドは新しいものでしたか?
フリードマン:新しいとは思わなかった。全てメタルのプロジェクトがあったとは思わないが、アイドル音楽を聴けば、しばしばヘビー・メタルのテイストがある。通常、アイドルは一種のヘビー・メタルの曲を1曲か2曲持っている。それがアイドル音楽というものだ。あらゆるスタイルを持っているんだ。とてもハッピーなポップ・ソングに続いて、ヘビー・メタルの曲がきて、それからダンス・ソングがあっても問題ない。アメリカの音楽では、自分のジャンルにこだわらなければいけない。
BABYMETALは、メタルのコンセプトで、だから面白いんだ。彼女たちの歌を外して、音楽だけ聴いたら、とてもばかでかくて、暴力的で、攻撃的だ。非常に典型的だが、とても良いヘビー・メタルに聞こえる。でも3人の小さな女の子たちをフロントに入れて歌わせれば、それはほとんど掟破りだ。シリアスなメタル・ファンは嫌悪感を覚えるだろう。
だがこれは重要な点だ。愛と憎悪という面があるならば、人々は話し出す。BABYMETALは、ルールに逆らう何かをやっている。メタルはチョコレートについて歌っている可愛い小さな女の子のものだとは考えられていない。それはマッチョで強くふるまう、でかくて、タフな男たちのものだと考えられている。ジョークとしてルールを破っても、続かない。BABYMETALが続き、数多くのファンを生んだのは、これを本当にうまくやったからだ。人々は無視できない。見なければならない、本当に楽しいからだ。ヘビー・メタルは古くて退屈で、多くの人々は嫌気が差している。いま何か完全にこれを裏切った、新鮮なものが興味を取り戻しているんだ。
インタビュワー:他のヘビー・メタルのアーティストはBABYMETALをどう見ているんですか?
フリードマン:ヘビー・メタルのミュージシャン、特に成功しているアーティストは、BABYMETALが最高に楽しいと考えている。ファン以上にBABYMETALが好きだ。より良く知られているミュージシャンは、ヘビー・メタル・ファミリーの新しいメンバーと考えていて、守りたいんだ。
インタビュワー:日本の音楽のどのような面を、BABYMETALはそのヘビー・メタル・サウンドに持ち込んだのですか?
フリードマン:BABYMETALの音楽の大きな部分は「合いの手」だ。これに相当する英単語はないが、コール・アンド・レスポンスみたいなものだ。これは日本の音楽には典型的で、特にアイドル・ソングはこれを念頭に置いて書かれている。これによって、人々は曲、しばしばコーラスやバッキング・パートに加わるチャンスを得ることができ、対位法は、リード・ボーカルと同じくらい重要だ。民謡や昔の歌謡曲にこれがあることが分かるだろう。合いの手はとても日本的であり、ヘビー・メタルにこれを入れると、これまでやられたことがなかった何かが得られる。人々がJポップ感覚を楽しめ、それでもラウドでとてもパワフルなものとなる。
一服の涼風
インタビュワー:BABYMETALの成功を、海外で名声を得ている他の日本のパーフォーマーと比較してみると?
フリードマン:このプロジェクトは非常にうまく、楽に行われたので、他のアイドル・バンドよりもより大きな飛躍ができたのだと思う。アメリカで既に非常にうまく成功しているきゃりーぱみゅぱみゅは同じようによい。質の高いサウンドとユニークなパフォーマンスはくせになる。アメリカの音楽で起こっていることに対して嫌気が差している人間にとって、これは正しいレシピなんだ。インターネットで新しいバンドを検索している人々がたくさんいて、きゃりーぱみゅぱみゅやBABYMETALのようなものを見つけ、音楽が楽しいからファンになる。言語は少しは障壁になるかも知れないが、同時によりエギゾティックになるので、魅力ともなりうる。BABYMETALの違いは、私たちみんなが知っている音楽のかたちを壊すこととの関係だ。これは本当にラジカルなんだよ。
インタビュワー:新譜、「Metal Resistance」には1曲英語の曲があります。BABYMETALは海外のファンにアピールするためにこの方向へ向かうべきだと思いますか?
フリードマン:1曲英語の曲があるのはいいけれど、やりすぎると、退屈でジョークになってしまう。日本のシンガーがアメリカのオーディエンスにアピールするために英語で歌おうとしても、うまく行かない。私の意見では、個性が薄れる。BABYMETALが日本語で歌っていることは、興味と神秘性を加えるし、グループのアイデンティティーが強まる。女の子たちが話してくれたところによると、しばしば歌詞がどういう意味かとたずねられたり、BABYMETALの曲のおかげで日本語を学んでいると話されるという。
最先端を行く
インタビュワー:グループの今後はどう見ていますか?
フリードマン:進化を続けると思う。彼女たちの新譜は素晴らしい。メジャーなヘビー・メタル・バンドのかたちでプロジェクトを進めている。ただ何かをでかい音で演奏して、人気が出ることを期待しているわけじゃない。何年も掛けて曲に取り組んでいる。それぞれの曲が、多くの人々を巻き込んだ大きなプロジェクトになっているので、これがビッグで、一貫性がある、ソリッドなアルバムとして出てきたのは偶然ではない。
いまは公式を変えないだろう。クリエイティブであるためにものすごく働いている。それぞれの曲、ステージング、ダンス・ナンバー、そして歌詞の中で創り出さなければならないものがたくさんある。非常に優れた人々が一生懸命働いていて、彼らが頭をひねり続ける限り、大丈夫だろう。幸運で起こることなどない。すべては注意深く検討され、実行されてきた。私は次にBABYMETALが何をするのかを見ることに非常に興味がある。
▼元記事
Bending Metal: Marty Friedman Takes on the Babymetal Invasion
翻訳どうもありがとうございます。
返信削除マーティのインタビューで初めて感動した。
ここでマーティが日本だと面白外人キャラ扱いの訳になってるのを初めて知った。
ベビメタの仕事を非常に冷静に客観的に捉えていて尊敬できる。
繰り返すが、素晴らしい翻訳をありがとうございます。
より良く知られているミュージシャンは、ヘビー・メタル・ファミリーの新しいメンバーと考えていて、守りたいんだ
返信削除これうれしいね
翻訳いつもありがとうございます。
返信削除研究者は研究者の気持ちがとてもよくわかるということですよね。
海外からやってきた一流のプロが本格的に日本を理解した上で、分析したという点が、ある意味マーティ氏にしかできない説得力を生んでますね^-^
これはプロジェクトに携わっている人たちが見れば引き締まる思いだろうし、続きたい他のグループも真剣に耳を傾けているでしょうね。
翻訳ありがとうございます!
返信削除>幸運で起こることなどない・・・。
からのマーティ氏の締めの言葉は読者側をもワクワケさせてくれますね。
日本に移住してまで、日本の音楽のユニークさ魅力を海外にまで伝えようと活躍していたマーティ氏の活動は必ずしも海外に向けては成功していたとは言えない。私自身、マーティ氏の著作を読んで、日本の音楽を評価してもらえて嬉しい反面、ちっとも世界で日本の音楽が広まっていかないじゃないか、という不信のようなものもあったのだ。しかし、マーティ氏の身近に関わるジャンルで活動していたBABYMETAの成功で、マーティ氏の日頃言っていたことが間違ってなかった、証明できたという気持ちも持てたし、彼自身も、このインタビューの言外に、「私の考えは間違ってなかった」という思いを出しているように感じるのだ。
返信削除マーティは日本の音楽を詳しく世界に上手に伝えてくれるね。
返信削除より深く理解できました!
返信削除翻訳ありがとう!