ヘビー・メタル・ミュージックはあらゆる場所で育っている(APMA関連)(後編)
ゲイリー・ブロック(2016年8月5日)
[訳注:以前翻訳した「オハイオ、そして世界のメタル事情」の完全版です]
音楽のための音楽
メタルの商業的な成功や成長は、ORCHIOPEXYというデイトン出身のメタル・バンドのメンバーであるレーマンの興味を引くものではない。
国際的なメタルの成長についてたずねられ、レーマンは「メタルの国際的な側面は、生まれた時から存在していたと考える。80年代前半~中頃にこれが始まってから、エクストリームな形態が進化するようになってから、世界中のバンドがテープを交換することで広がっていった。ペンパルを増やして、友人にテープを送ってもらうんだ。だからインターネット以前に、この巨大なアンダーグラウンドのネットワークが生まれた。お互いに人々がテープをダビングしていたんだ」
レーマンによれば、これで多くの主要な、伝説のバンドが活動を始めた。「お互いにテープを夢中でミックスしているティーンエイジャーだった。だからこの種の音楽が好きなんだよ。これは独自の言葉で自己完結しているコミュニティーなんだ。このゴアグラインド・メタルをリリースしているレーベルはあるけれども、その外側にいるのが好きなんだ。それ自体のために、この音楽をトレードして、シェアする。完全にアングラだ」
レーマンは、世界中を旅して人と会うのが好きだという。「俺は実際フィンランド、インドネシア、日本、スロベニアにペンパルがいて、そこから音楽を送ってもらうんだ。これはとても素晴らしいと思う」
人々はこの音楽シーンの部分にただ気付いていないだけだという。「金を稼ぐのは悪いことじゃないが、ロック・スターとして自分を取り扱ってもらう必要があると感じた時点で、そこから親しみが奪われてしまう。ビジネスのように取り扱うと気が抜ける。これは主に、企業によって腐敗していない最後のコミュニケーションの防衛拠点なんだと思う」
国際的なメタルは、アメリカのメタル・ミュージックに影響を与えただろうか? 「もちろんだ、特徴のあるエリア、国、それに都市でさえも、人々にアピールする特徴のあるメタルの扱い方を持っている。グラインド・コアは、英国のバーミンガムで、NAPALM DEATHというバンドが80年代前半に始めて、世界中のファンに受け入れられ、そこから広がっていった」とレーマンはいう。
コロンビアでは、コロンビアのバンドだとすぐに分かるようなとても具体的な種類のデス・メタルを演奏しているという。あるサウンドが国の特徴となりうるのだとレーマンは指摘する。
メタルの未来は? 「より幅広いアピールがあり、より人気を得ていくバンドは、俺の興味の対象ではない。俺が好きな種類の音楽はいずれにせよ人気を得ることがないと思う。俺にとって、決まり事の外側でより多くのバンドが演奏することを決めた方がクールだ」
国際的なアピール
ウォーラッチは、ボウリング・グリーン州立大学のポップ文化学部の助教授だ。国際的なメタル音楽に関する多くの記事と、2冊の本、「Modern Noise, Fluid Genres: Popular Music in Indonesia, 1997-2001」、それに「Metal Rules the Globe: Heavy Metal Music Around the World」をそれぞれハリス・M・バーガーと共著、それにポール・D・グリーン編で、デューク大学出版局から2011年に出版している。
ウォーラッチは、現在、小さいものだがメタル・シーンがありえないような場所から生まれつつあるという。「日本と対抗するような大きなメタル・シーンがインドネシアにある。でも、ナイロビ、ボツワナにも小さなシーンがあり、サウジアラビアからメタル・バンドが出てきている。インドネシアでは、首相がメタルの大ファンだといわれている」
「もちろん、日本には巨大なメタル・シーンがある。日本はCDのような録音された音楽について、世界最大の市場だ。人々は国内市場のためだけの音楽を制作することで完全に満足している。そのヘビー・メタル・ミュージックは日本人に向けられている。アメリカ人が、自分たちが理解出来ない音楽に特に関心を持つことがあるとは考えていない」と、ウォーラッチはいう。
彼らはアメリカが自分たちの理解出来ない言語による音楽に関心を持たないという点で間違っていると、BABYMETALの魅力を指摘しながら、ウォーラッチは語っている。
「長い間、BABYMETALのようなことが起こるとずっと予言していました。アジアにおけるヘビー・メタルの人気の広まり、そしてYouTubeのビデオの成長と可用性によって、最終的にはこのような何かがアメリカでも人気を得るのだ。BABYMETALのようなグループがもっとでてくると考えている」とウォーラッチはいう。
メタル・ミュージックの国際的なアピールとは?
「それは良い質問だ。どこを見るかによって違ってくるだろう。これはこの音楽が持つカタルシス的なエネルギーと関わっている。音楽の強烈さ、複雑さ、そしてメインストリームからの違いと関係がある。多くの人々はメタルを、誰もが好きになると考えられている、メインストリームで、体勢順応的で、人気のあるスタイルの音楽だとは思っていない。これは君を差別化する音楽なのだ」とウォーラッチはいう。
彼は、メタルはネパール、フィンランド、そしてラテン・アメリカ全体で人気があるという。シンガポール、マレーシア、そして政府に関する状況にもかかわらず、キューバにも国家が公演するメタル・バンドが存在する。「国家が公演するメタル・バンドがある世界で唯一の場所だ」と、教授は、中国にはごく小さなメタル・シーンが存在し、どの省にもバンドがいるが、ファンはほとんどいないと指摘している。
教授の好みは?
メタルの成長に関する他のインタビュー同様に、ウォーラッチにも、今は何を聴いているのか、そしてどのバンドを勧めるのかきいてみた。
「一つは台湾のグループ、CHTHONICだ。私は彼らが21世紀最高のメタル・バンドだと思う。新譜の「Unlocking the Truth」CDを買ったばかりだが、良い曲が何曲かある。ブルックリン出身の若い十代の連中のいくつかが、素晴らしいYouTubeビデオを出している。それからフィンランドのAMORPHOUSというバンドがある。彼らはとても完成度の高い、クリエイティブで、音楽的に洗練されたバンドだ」と教授はいう。
「PANOPTICONは、ブラック・メタルとブルー・グラスを組み合わせた素晴らしいバンドだ。「ブラック・グラス」と呼ばれている。インドネシアのSERINGIAというバンドがすごい。私はいろいろなもの、それから昔のものの聴くよ。あらゆる種類のメタルが好きなんだ。ドイツのBLIND GUARDIANも聴く。昔のパワー・バンドだがまだまだがんばってる」
敬意とカネの色
アメリカの音楽形態として、メタルは人気やレコード・セールスに関してそれにふさわしい信用を得てきただろうか?
「音楽業界におけるこの種の収縮や縮小の中で、(音楽業界の幹部は)メタルが好きな連中はまだレコードを買うことに気付いている。かつてのようにののしられたり、忘れ去られたりはしない。メタルヘッドは、以前は持っていなかった市場価値を持っている。その上で、ヘビー・メタルは伝統的に、批評家のお気に入りではなかったんだ」とウォーラッチは語る。
だが変わったのは、メタル・ファンが成長したことだ。「成長しても聴くのをやめない連中の数、そしてメタルに戻ってくる連中の数は驚くべきものがある。20代後半に一度休みを取ったんだが、30代後半になってまた戻ってきた」
ウォーラッチは、自分がマス・メディアで見た最も明確なメタルの擁護は、ポップ・マターズというブログでのアトランティック・マンスリーのライターのような連中、自分と同じような年齢の連中が書いたものだという。
「30代後半になって、誰もがメタルを捨てていた1980年代前半のように、誰もが無視する若造ではなくなっていた。当時はヒステリーや反悪魔主義者のモラル・パニックがあった。私たちの声は当時耳に届かなかった。ブログもインターネットもなかったからね」とウォーラッチはいう。
「だが2000年代後半に、私たちはロック評論家に、ジャーナリストに、そして教授になったんだ」
でもメタルはいまだに、それほどの敬意を集めているわけではない。ウォーラッチは、メタルが非常にネガティブに見られている数多くの会議、音楽学者、音楽評論家の会議にいろいろ出てきたが、連中は侮蔑の目でメタルを見ている。
だがメタル・ファンは購買力を持っている。
「メタルヘッドは読むんだ、たくさん読む。連中はリテラシーがある。つまり、メタルの本は売れる。メタルのレコードは売れる。人々は「まだレコードを買っているのか? まだ本を読んでいるのか?」と言うだろう。私は人々がそういうのがもういやでたまらないんだ」とウォーラッチは指摘する。
「人々は本を買っている。メタルヘッドが好きだという理由で、この音楽に対して高い関心が払われている。私たちに人々が関心を払うのが好きだ」
ゲイリー・ブロックはルーラル・ライフ・トゥデイの編集者で、2年前にYouTubeでBABYMETALの"ギミチョコ!!"のビデオを見たときに、海外のメタルが盛んになると予言したと主張している。連絡先は、937-556-5759、またはTwitterのGBrock4から。
▼元記事
Heavy metal music growing everywhere
長文翻訳お疲れ様です
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