仮面を外したBABYMETAL(その1)
未来のメタル
BABYMETALは既にメタルのロードマップを書き直したが、信じられないほどビッグだった2016年を経て、彼女たち自身の未来は謎に包まれている。ニック・ラスケルがフォックス・ゴッドの次の予言を聞くことを期待して、日本へと渡った。
東京ドームに行ったことがなくても、安心して欲しい。これは地球の他の会場とはものすごく違っている。最大収容人数は55,000人だ。だがこの会場を傑出したものとしているのは、単に数字だけではない。音楽ばかりでなく、野球に使用されているこの巨大な構造物は、金属ではなく丈夫な繊維で作られた、空気で支えるエアー・サポーテッド・ルーフを採用しており、全体が崩れ落ちないように、一定レベルの気圧を内部で保たなければならないことになる。垂木まで上がってみれば、自分がアリを見ているように感じるだろう。ステージの前では、自分がアリであるように感じるだろう。これは超現実的で、不自然なほど巨大に感じられるように設計された場所だ。
9月19日の開演時間に向かう間も、BABYMETALのメンバーは、自分たちがこれからやろうとしていることを理解しようとしていた。そして彼女たちがやろうとしているのは、まず聞いたことないような偉業である、2夜連続の公演だ。
「前日に、私は会場を見に行きましたが、とても不安になりました――ショーが始まるまでは」と、ユイメタルと彼女の仲間たちにK!が出会った時のことを振り返っている。「心臓がどきどきしました。不安ということばさえ、私がどういう状態だったのかを説明できているのか分かりません!」
モアメタルにとって、「あそこで演奏すると考えただけで、眠れないこともありました。私は自分自身を、自分の心を落ち着かせようとしましたが、体が神経質になってしまうんです」
モアメタルは、日本のバンド、EXILEを見るためにドームに行ったことがあり、ユイメタルとスゥメタルは、ガール・バンドのPERFUMEをドームで見ていた。PERFUMEは、ステージに上がると、会場に「吸い込まれてしまう」とユイメタルに教えてくれた。これは本当だと分かる予言となった。
「自分の存在がどれだけ小さいのか分かりました。私は呑み込まれちゃうと思いました」
だが、会場に吸い込まれたり、呑み込まれたり、あるいは別のかたちで消化されてしまう代わりに、BABYMETALはすぐに、飛翔した。ものすごく売れたセカンド・アルバム、「Metal Resistance」をリリースし、SSEアリーナ、ウェンブリーで単独公演を行った日本のバンドとなった(東京のGUNS N' ROSESに対する回答である伝説のX JAPANでさえなしえなかったことだ)年に、三人は、この運命の夜について三つのポイントに同意した。まず第1に、この年に起こった他のことすべてが、準備のようなものだった。2番目に、不安で眠れない夜のすべてにもかかわらず、フォックス・ゴッドは、彼女たちが演奏することを予言したのだから、彼女たちは自分たちの中で成功すると分かっていた。だが、一番心の琴線を打ったのは3番目のポイントだ。
「あそこで演奏すると考えたことはありませんでしたし、それが自分の目標だと思っていました」とモアメタルは振り返る。「でもあのショーをやったあとで、BABYMETALはもっとやれると思いました。ただの出発点だったんです」
フォックスは、それ以上にビッグになれることを知っている。だがBABYMETALの世界では、文字通り、どんなことでも起こりうるとすぐに信じ始めることになる。
11月、東京。BABYMETALが東京ドームで大成功を収めてから6週間が過ぎた、バンドがRED HOT CHILI PEPPERSの前座として英国に戻るまで1ヶ月ある。過去二ヶ月ほどの不安やプレッシャーは解消され、レイドバックした元気さのようなものに代わった。東京の超クールな渋谷からすぐのところで、これから写真スタジオで5時間を過ごすことも、ごく気楽な楽しみという雰囲気で取り扱われている。メンバーがそれぞれ腰を下ろしてケラング!と話していると、質問して、これを日本語に通訳して、バンドが答えて、これをまた英語に通訳するという落ち着かないやり方さえも、たいしたことではないと思えてくる。
長々と、カジュアルな雰囲気で、こういう感じでバンドと話すことは、ジャーナリストがそれほど頻繁に持てるような機会ではない。それはユイメタル、モアメタル、そしてスゥメタルについてもう少し、実際に知ることができるユニークなチャンスだからだ。なぜならば、欧州とアメリカ、そして日本ではおそらく、相当なカルト的関心の対象であり、新聞のトップ記事であり、ランクAのスターであり、イエス・キリストよりビッグである一方、信じられないことに、これほど巨大で、大衆の目にさらされているにもかかわらず、このトリオについてはそれほど情報がないのだ。それから、モアメタルが、びっくりするような真実についての爆弾発言をした。
「外に出かけても、誰にも気付かれたことなんかないんです」、モアメタルはにっこりと笑った。「実際には、たまに気付いてもらいたいなと想うこともあります。それってかっこいいと思うんですが、同時に、気付かれないのかっこいいなと思うんです。たぶん私が外出していて、たくさん食べていて、誰かが私を見て、モアメタルだと気付いたら、ものすごく恥ずかしいですよね」
ステージでモアメタルを演じ、バンドを通じて公的人格を持つことは、人が自分をどのように見るのかをコントロールできるのでクールだとモアメタルは言う。でも、実際、BABYMETALモードに入るのはそれほど大変ではない。創り上げられた仮面ではなく、表情を変える方が大きい。
「複雑なんです、だってステージのモアメタルと日常生活での私は同じ人間ですから」とモアメタルは説明する。「ですから、実際にどちらがどちらというのを区別するのは難しいんですが、一つ分かっているのは、BABYMETALは私たち三人が揃っているから特別なんです。もし私が一人で活動していたら、これは実現しなかったでしょうし、私たちがここまで来ることもなかったと思います。スゥメタルとユイメタルに出会ったことが、私に本当に多くのこと、そして他の人たちとの出会いをもたらしてくれました」
フォックス・ゴッドが自分をロックスター――そしてその最も大げさな言葉を選んだとしても、この言葉は、BABYMETALが行うことの色彩豊かな爆発を捉えるにはなぜか不適切に思えるのだが――になるように選ばなかったとしたらとたずねると、モアメタルはたぶん「公園を走り回って、子供っぽいことをしているでしょう」と答えた。同じような仮定的な状況で、スゥメタルは歌っているだろう。「私はいつも歌うのが好きでした」とスゥメタルは言う。「町のどこにいてもそうしていました」。一方ユイメタルは普通の高校生になって、「たぶん演技に関心を持っていたでしょう」と答えた。
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▼元記事
Kerrang! 1648
Babymetal Unmasked: Future Metal
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