2017年5月23日火曜日

[Magical Idols] 新しいアイドル:BABYMETAL、音楽のヒロイン(過去記事)

新しいアイドル:BABYMETAL、音楽のヒロイン(過去記事)

(2017年4月21日)

[フランス語からの重訳です]






注:私の意見や分析の文責はすべて私にあります。自分の文化の方向から自分が聴いたり、見たりするものをとらえないように心がけましたが、西欧的なものとなっているかも知れません。

2010年ー2011年には既に音楽シーンに登場していたBABYMETALは、その典型的でないコンセプト(まさしくアイドル・メタル)ばかりでなく、伝統的なアイドルという概念からの逸脱の仕方という意味において、明らかに傑出した存在だ。国内だけでなく、海外での成功を考えれば、特に他のアイドルのグループと比較して、このことがうまく行っている。

アイドルとメタルをミックスすること自体がアイデアとしては間違っているように思えるが、10年に渡るハロー・プロジェクトのファンとして言わせてもらえば、実際、これは賢い。変に聞こえるだろうけれど、旅行中に私はJポップも好きなメタルヘッズにたくさん会った。二番目に、BABYMETALはメタルのファンだけでなく(女の子たちが認められる上で重要な役割を果たしていて、事実彼女たちはDRAGONFORCEと共演している)、Jポップなどしか聴いていなかった人たちも魅了している。コアなメタルよりもソフトな印象を与えるからだ。(私はDIR EN GREYのファンなんだけど、スゥは癒やしになると認めざるを得ない。)

彼女たちの曲の多くは、あらゆるメタルに対するオマージュになっているけど、私自身はビジュアル系しか分からない。ただ"紅月"はX-JAPANをやっていて、実際これは意図的なものだと分かる。聴いていると"紅"を思い出すし、とてもクールだ。私の青春だし、そこに何かが加えられている。

["紅月"のビデオへのリンク]

大げさなだけだという人もいるだろうけど、トリビュートはトリビュートであってコピーじゃないし、やっぱり別の曲だ。彼女たちの曲はあらゆるところに参照が入っているけれど、他のものが何かは私には知識がない(^-^)

BABYMETALはこうして、自分たちの個性を保ちながら、あらゆるスタイルに取り組んでいて、そのことは見ていて楽しい。

だが、音楽の話はもう十分だろう。ここではアイドルとしての女の子たちについて語ろうと思うし、読者が中学生アイドルを知っていればさらに素晴らしい。

基本的に、アイドルは女性らしさ、微笑、そしてファンに一種のファンタジーを与えるという規則に従わなければならない。あなたが夢みる女の子は、若くて、可愛くて、やせていて、微笑んでいて、ファンに対して献身的であり、少しか弱いので守りたくなるという日本の基準に従っている。女の子たちの年齢を考えれば、高校生の制服が一般にこのフォークロアに存在していることには同意してもらえると思うが、これは難しい問題なので後で述べる。というのは、私がアイドルに関心を持ったときには、同世代の女子たちばっかりだったんだけど、ライブで観客を見たら、大人の男性ばかりだった。彼らが対象となるオーディエンスであり、同世代の女子ではないのだ。

この側面はステージ衣装や、多くの女の子たちがやっているモデルの仕事に良く見られる。13歳あるいはそれ以下のビキニ写真なんて……病んでる。

それからBABYMETALを結成する前に、女の子たちはさくら学院(BABYMETALはそのユニットに過ぎなかった)のメンバーであり、このことを覆すものではない。

彼女たちはさくら学院から出たけれども、この種のグループのターゲットが誰かは分かる。

さて、私たちは基本的なアイドルのコンセプトを思い出したところだけど、それでこれ……。

["Road of Resistance"ビデオへのリンク]

甘い? いいえ。微笑み? お望みならば(でもそれは曲がそうするのであって、そうなるように仕向けられているわけではない。)

[キャプション:彼女の目の力は、真珠をまとうために存在しているわけじゃない]

アイドルが評価される純真さは……あるかたちでは存在しているけれど、そのことは何よりも、女の子たちのふるまいや、ステージで示すエネルギーというかたちになっている。通常見るような強いられたもの(ハートとかピンクとか)はない。彼女たちの表情に見られるのは大きな力であり、強い意志であり、男性が守りたくなるようなものではない。BABYMETALは、守りたい女の子たちとしてではなく、叙事詩のヒロイン、あるいは独立してやっていける反抗的な妹たちとして存在している。誘惑があるとすれば、それは彼女たちがものすごく強面だということだ。

実際、彼女たちの歌詞の多くは、自分たちの年齢のテーマが数多く取り上げられている点も重要だ(お祭り("いいね!")、コンサート("ヘドバンギャー")。中には伝統的な日本のゲームのテーマ("悪夢の円舞曲")、いじめ("イジメ、ダメ、ゼッタイ")、あるいは兄に度胸があるかを探すこと("Sis. Anger")などもある。伝統的なアイドルでは、曲は多様性からはほど遠く、通常はファンが自分のこととしてとらえられるようなラブ・ストーリーを取り上げている。

この点で、"Karate"は私の興味をひいた。これは戦い、決して倒れることのない強いヒーローを体現しており、衣装もアーマードレスのようになっている。BABYMETALにはいつも多くの女性らしさ(たとえば"メギツネ")があるが、自律した強い女性という姿も示す。アイドルというのはしばしばものすごく馬鹿な振りをしているというのに。

振り付けは戦闘に基づいており、これはストーリーテリングと美学の要素を示している。魅了するための要素と言うよりも、それ自体系統だったものだ。

結果として、欲望の対象という以上に、BABYMETALは私たちが賛美し、自分たちもそうなりたいと願い、ファンである女の子たちにとって優れたモデルである人たちになった。彼女たちの目標は、非常に男性的な環境の中で、より多くの人々にメタルを聴いてもらうことでもあるので、彼女たちは、ジャンルに新鮮さを吹き込みながら、素晴らしく自分たちを押し出している。私の意見では、これはとても成功しており、あの女の子たちは真のアーティストだ。特に、彼女たちの宇宙とその衣装のレベルによって、自分のようなちょっとしたゴスエモのような十代に直接訴えるものがあると思う。また彼女たちの歌には多くのユーモア、声のソフトさと楽器の間のやりとりがある("Sis. Anger"だけではなく、めちゃくちゃおかしい"おねだり大作戦")。

だから彼女たちは多くの異なったオーディエンスを動かし、あらゆる人たちをちょっとばかり和解させる。基本的にアイドルに二の足を踏む人々でBABYMETALの大ファンという人がいる。なぜなら、彼女たちはこのコンセプトの受け入れられない(および/または馬鹿げた)面を取り払ったからだ。他のアイドルのファンでもあり、またある面で落ち着かないことも多い私のようなファンにとって、BABYMETALは悪いところのない、すべてが良い存在であるし、そもそもアイドルはそうあるべきなのだ。

だからこの記事のタイトルに「新しいアイドル」とある。私の意見では、BABYMETALはすべてのアイドルのあるべき姿だ。自分の存在、若さにもかかわらずその才能、そして同年代の若いファンにとって、自我同一性のAクラスのモデルであり方向性であることに対して賛美される女の子なのだ。そして男性ファンもいるけれども、そちらからはその存在、特に音楽に対して賛美される。

アイドルは誰でも、ファンに喜びとモチベーションを与え、ステージでのエネルギーと進化を通じて、自分たちが何でもできるという印象を与えることができる。そこにBABYMETALは存在し続ける。私にとってはこのジャンルで。そして彼女たちがメタルを進化させるように、アイドルも進化させることに成功することを期待している。

▼元記事
La nouvelle idol : Babymetal, héroïnes de la musique





10 件のコメント:

  1. すごいな
    ドルヲタ馬鹿にできんな

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  2. フランスのハロオタ恐るべし。
    一読の価値あり。

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  3. アイドルの
    ロールモデルA:BABYMETAL
    ロールモデルB:さくら学院
    向上心を持って清く、正しく、美しく
    かな?

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  4. メタルは進化させるのはBABYMETALかもしれないけど、アイドルを進化させるのはさくら学院かもしれない。理由は長くなるので省略。

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  5. 「新しいアイドル」と言うより、スター本来の定義って感じなのかな?

    まあ日本に居るのは、アイドルを名乗ったタレントが大半だから、新しく感じるのも理解できる。

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  6. 期待できそうにないタイトルから凄まじい熱量とクオリティーの内容が。翻訳ありがとうございます。

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  7. アイドルファンとしての立場からの、今まで見た中で最も説得力のある分析。
    フランス文化恐るべし。

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  8. 海外の目ざとい女の子は最初からBABYMETALを「私たちも聞けるメタル」「私たちも好きなアイドル」って【男性視線でなく女性参加型の】ムーヴメントとして捉えていたのに、世界中の男が「BABYMETALはSpecialだ」と言いながらRedditとかで普通の女ボーカルのメタル、普通のアイドルにしたがってたんだよね。

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  9. 清く正しく美しく……宝塚であり、アイドルであり、メタルであり、
    世界に老若男女層にファンがいて、ベビメタはホントに稀有な存在!

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  10. この論者の素晴らしいところはアイドルファンの立場から少女アイドルのポジティブな側面を挙げつつ、そのネガティブな側面にも完全に自覚的な点。
    その上でベビメタはそのネガティブな部分を克服したと賞賛している。
    国内のアイドルファンからこのような視点の論は見たことがなく、アイドルに否定的な人物でもベビメタを支持出来る理由を実にクリアに説明している。

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