[Jot Down] BABYMETALの奇妙な旅路(その2)
エミリオ・ド・ゴルゴ
[スペイン語からの重訳です]
これまでのところ、やはり何も新しいものはない。あどけない少女のバンドという公式は日本ではとてもありふれているし、理屈の上では、それほど秘密めいたところはない。ポップなメロディーとかわいいイメージだ。だがどのようなビジョンによるものかは神のみぞ知るだが、小林は最初のコンセプトから離れ始めた。いつもと違う子供たちの音楽を録音する可能性に刺激を受けたのだ。だがどのようなスタイルを使って違いを出せばいい? すず香は素晴らしい声を持っているが、彼女の声の響きは非常に伝統的だったので、彼女が歌い方を知っていた、「アイドル」では典型的なモダンなR&Bやポップから離れるくらいでは実験は不十分だった。この問題についていろいろ考えてからある時点で、小林はひらめいた。彼のお気に入りの音楽はヘビー・メタルだったので、もし甘いメロディーにギターの伴奏を加えたらどうなるだろうと考えたのだ。確かに、このようなアイデアは意味がないように思えたが、それでも小林は試してみて、少なくとも自分の視点からはうまくいった。怒鳴り声とまではいわなくても、通常は力強い声が伴うギターに、すず香の天使のような声はフィットした。サウンドのケミストリーに満足すると、実験に欠けているのは名前だけだった。そこで浮かんだのがBABYMETALだ。これは日本語の発音では、ヘビー・メタルと韻を踏む。従って、すず香はスゥメタルに、二人の仲間、水野由結と菊地最愛はそれぞれユイメタルとモアメタルになった。
あまりに馬鹿げていて、これまでの所、これはひどいジョークで、たぶん誰も思いつかないような途方もないばかげたことだと思うだろう。だが、小林啓がマネージャー、そしてプロデューサーとしてその優れた才能を発揮し始め、この商品のコンセプトができた瞬間からそれは存在したのだ。まず、小林はアメリカで良くあるような強烈なギターで演奏される代用的あるいは適当なコード構造ではなく、本物のヘビーメタルで女の子たちをバッキングする音楽を望んだ。最初のシングルを録音した時、小林はPANTERAのアルバム(ジョークじゃない、小林は何度かこう言っている)のようなミックスで、楽器をミックスした。また、特にダンスにおいてビジュアルな側面を重視し、ギターのパワーは反映しながら、かわいさは失われないようにした。広島時代のすず香のダンスの先生を振付師として雇ったので、女の子たちはかわいいステージをエネルギッシュにやれるようになった。私は振付師でも何でもないが、かわいいポーズを取りながら、ホーンをするのは独自の優美さがあると思う。
"ド・キ・ド・キ☆モーニング"と名付けられたファースト・シングルは、CLAWFINGERの"Do What I Say"の子供がシンガーを誘拐して曲を手に入れたように、表面的には奇妙に響く。だが、小林はすべてをさらけ出したわけではない。小林はロック・コミュニティーで有名であり、後に認めたように、日本のヘビー・メタルのファンから石を投げられたり、それまで何度も仕事をしてきたので、小林が良く知っていた国内のメタル・ミュージシャンのコミュニティーが、BABYMETALは異常だと考えるのではないかと心配していたのだ。また分かりやすいポップに慣れた青少年のリスナーが、この発明をどのように消化すれば良いのか分かるという保証もなかった。最初から、「何じゃこりゃ」という要素は、BABYMETALの中にものすごく存在していた。さらに当時、バック・バンドもいなかったし、本当に歌っていたのはすず香だけだったので、まだ実験室の産物とは大して変わらなかった。ただし、最初のライブで、BABYMETALは既に自分たちの主な特長のいくつかを披露している。すず香の自身と三人の女の子たちが振り付けを踊るときのクセになるエネルギーだ。既にその魅力の一端が表れていたことは否定できない。彼女たち(そしてはっきりとは言えないが、盛り上げるために使ったのではないかと疑っているサクラたち)は、新しい種類のショーを創り上げた。2010年の白昼夢のような女の子たちのデビューを見て欲しい。
[BABYMETALのデビュー・ステージの映像]
女の子たちがステージに慣れるにつれ、活動はさらに頻繁になっていった。最初はポップ音楽のサーキットに登場していたが、小林は「アイドル」シーンでは守られるべきプロモーションのルールをいくつか巧妙にスキップしていた。その撮影には細かな指示が与えられる。「カジュアル」ということになっているテレビのインタビューでも、写真撮影のように細部まで考えられている。小林は虫眼鏡で見るように、衣装、メーキャップ、シナリオ、そして照明に注意を払った。BABYMETALはステージではより洗練されたイメージを高めていったが、小林はオフステージでは、特別な照明やメーキャップ、あるいはレタッチなしのできるだけ自然な形でカメラが彼女たちを捉えることにこだわった。ステージで観客にホーンを掲げている三人の小さな獰猛な生き物たちと、本当にまだとても小さな三人のお子ちゃまたちの間のコントラストを強調したのだ。このギャンブルは見事にあたり、BABYMETALはアイドル界以外からの注目を集めるようになった。2012年に彼女たちは日本の重要なロック・フェスの一つ、サマーソニックに登場した。ほとんど観客のいない小さなステージで演奏したが、最前列のいつものファン以外の疑いを持ったオーディエンスのグループは吹っ飛んだに違いない。
小林啓が細かなところまで注意を払って来なければ、単なる逸話で終わっていたかも知れない。例えば、自分が観客として出向いたヘビー・メタルのコンサートで、ある照明技師から感銘を受けた時に、小林はBABYMETALのために働くよう説得した。以降、照明はBABYMETALのステージングの別の魅力となった。さらに小林は、ステージ裏からの再生に合わせて踊るプレイヤーを雇った。おかしいのは、観客に本当に演奏していると思わせるために、きちんと再生に合わせるリハーサルを行ったことだ! 小林はこれでは不十分と考えると、別のミュージシャンを集めたが、今度は本当にアルバムとライブで演奏するミュージシャンだった。彼はただに藪をつついて回り、ミュージシャンと契約したわけではない。日本のメタル・シーンのミュージシャン中のミュージシャンに演奏してもらうために、できる限りの力で説得して回ったのだと思う。演奏面においては、BABYMETALのバックバンドである神バンドは、国際的なヘビー・メタル・シーンでもトップクラスだ。
本物のミュージシャンのグループを伴って、BABYMETALのライブ演奏は饒舌なパントマイムではなくなり、合唱やイフェクトの一部が録音である本当のコンサートとなった。そのライブ・ショーのパワーがさらに二倍となったことで、BABYMETALは、いつもシーンからの完全な拒絶を恐れていた小林も驚いたことに、日本のメタル・ファンの尊敬を集めるようになった。やがてBABYMETALは様々な種類のオーディエンスを集めるようになり、二年ほどの間に、彼女たちは国内のトップにまで駆け上がる。2013年、彼女たちはシングル、"イジメ、ダメ、ゼッタイ"をリリースし、成功を収めて東京の伝説の武道館で演奏することになった。この会場ではボブ・ディラン、オジー・オズボーン、そしてCHEAP TRICKのような伝説のアーティストが録音を行っている。当時、女の子たちは16歳(スゥメタル)と14歳(残りの二人)で、過去4年の間にステージングを大きく洗練させており、デビューとはまったく別物になっていた。ミュージシャンたちはもちろん圧倒的だったが、彼女たちはまた完全にステージを支配していた。彼女たちはまだ異星人だろうか? かなりそうだったが、もう彼女たちは本当のグループになっていた。それだけではない。小林は国外では知られていなかったが、多くの西洋のメタル・バンドびっくりするような素晴らしいシーンを演出していた。例えば、"Babymetal Death"という曲の中間で、16歳のシンガー、スゥメタルは磔にされる。狂気そのものだ。メタル・ファンはこの演出に文句の言いようがなかった。BABYMETALとその磔は、マリリン・マンソンがミサの従者に見えるほどのものだったからだ。
▼元記事
El extraño viaje de Babymetal
翻訳ありがとうございます。いつもありがとうございます!
返信削除元のライターのエミリオ・ド・ゴルゴの長文記事は熱がこもっていて面白いことは面白いんだけど、事実確認等の基本的な信頼性がほぼゼロで、エミリオの主観やストーリーありきのフィクションに偏りすぎなところが読み手に誤解や虚実を刷り込んでいるけど、こうやって取り上げてくれるのはありがたいですね!
かなり調べて書いてると思うよ、Kodaのインタビューが元ネタかな?
返信削除ド・キ・ド・キ☆モーニングができた時 「怒られちゃうかな?」とか思ったとか、照明の事も同じインタビュー記事のネタだったかな。
まだ続きがありそう。楽しみDEATH
返信削除まぁ多少の間違いは害のないものであり、熱心なファンになれば上書きされるものだから放っといていいと思う。
返信削除音楽評論で大事なのはやっぱ熱量だね。
あと、BMDでなぜ磔シーンのあるテイクがリアクトされるのかという答を書いてくれてるところが助かるね。
骨バンドにも係わらずキリスト教圏を圧倒する背徳性があったんだね
KOBAMETALはめったにインタビューに応じないから仕方がないけど、当然ながら一次ソースを記者自身が取得したうえでの記事ではない。もちろんこれに関しては記者に非はない。
返信削除ただ、確認できない部分等を、出所不明の話をかき集めてきたり、さも「本人や関係者に聞いてきたかのように」記者の想像性で話を作ってしまうとなると「誠実さはない」「無責任」と言われても仕方がない。
妙な憶測や想像で「(良い意味でも悪い意味でも)伝説」が生まれちゃうのはよくある話だけど、こういうのは個人的には感心しない。記事にしてくれたのはありがたいけど、だからといって捏造・曲解してよいという話にはならない。
この記者がプロフェッショナルなら、記者の仕事への根拠ある批判に関してはノープロブレムだと思うよ。
さすがにサクラはねぇな、
返信削除どんな零細の地下アイドルでも
熱量のあるファンを数十人くらいは獲得できる。
さくら学院を訳そうとして失敗したのか?